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「僕も離婚して欲しい訳じゃない。だけど、転校したい。ごめん」
「うん、わかってる。苦しめてごめんね」
それだけ言って、樹くんの部屋を出た。
リビングに戻ると、田中さんと母が真剣な顔をして話し合っている。
母は私に気づくと「樹くん、どうだった?」と声をかけてきた。
「樹くんも気付いていたみたい。きちんと謝ったよ。ただ、今の高校には行きたくないから転校したいって」
「そうだろうな。京子さん、また迷惑をかけると思うけど、一緒について来て欲しい」
田中さんは母と離婚したくないのか。
「私の事なら心配しなくて良いよ。元々来年の4月にはマンションに引っ越そうと思っていたし」
出来たら離婚してほしくないと思い、母に声をかける。
母はしばらく悩んだ後、私と田中さんの顔を見ながらゆっくりと話を始めた。
「健吾さんと結婚出来て嬉しかった。頑張って良い家庭を作るつもりだった。だけど、樹くんが不登校になって色々考えたわ。
私が樹くんのお母さんになるのは難しい。 樹くんも新しい高校でやり直すなら、健吾さんと2人きりの方が気を使わずに済むだろうし、上手くいくと思う。
至らない妻でごめんなさい。健吾さん、離婚して下さい」
「……離婚じゃなくて別居という形をとって欲しい。樹はもう18才だ。すぐに私が必要な年ではなくなるだろう。いつか樹が自立した時、もう一度一緒に暮らす事を考えてもらえないか?」
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