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田中さんの言葉に、思わず母と私は田中さんの顔を見た。
田中さんも母もお互いに好きあっている。 だけど、田中さんには樹くんがいて、母も田中さんも今は樹くんの事を第一に考えている。
樹くんは今は高校一年生、大学生になれば家を出て自立するかもしれない。
その時に、田中さんと母が一緒に暮らす?
それも良いかもしれない。母や田中さんにとって、2年半なんてあっという間の事だろう。
「お母さん、私は良いと思う」
母の背中を押したけど、母はまだ悩んでいる様だった。
「人の心は変わるものだから、健吾さんを何年も縛りたくない。
お互い別々の道を一生懸命進んで、その先に再婚があるのは良いと思うけど、別居という形は違うと思う」
母は離婚の意思が固い様だ。
樹くんが引きこもりになってから、田中さんは機嫌が悪く、母にも厳しく当たっていた。そういうところも、母が離婚を決心した理由なのかもしれない。
「わかった。京子さんが離婚を決心しているなら、離婚届けに判を押すよ。
だけど、俺はいつかもう一度やり直したいと思っている。
樹の問題が発覚してから、俺はいつもイライラしていたし、京子さんを責めてしまった。
まだ樹の母親になって半年しか過ぎていない京子さんを責めるなんてしてはいけなかったのに。本当にすまない」
田中さんの目は真っ赤だった。田中さんなりに母を愛しているのが伝わってくる。
「健吾さんだけが悪いんじゃない。私も悪いの。樹くんのお母さんになるって決心したのに、問題が起きた時、健吾さんの顔色を伺っていただけだった。ごめんなさい。母親失格よ」
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