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だけど、母の出した答えは再婚はしないだった。
「ーー今の関係がすごく心地良いの。再婚して妻になってしまうと、またお互いにつらくなるかもしれない。
だから、再婚じゃなく良い友達として、これからもこんな風に会いたい」
田中さんはきっとOKしてもらえると思っていたのだろう、驚いた表情で母を見ている。
「ごめんなさい」
私も母が再婚を断るとは思わなかった。
こんなロマンチックにプロポーズしてもらったのだから、「よろしくお願いします」と答えると思っていた。
ただ、この1年間、母は楽しそうに働いていて、休みの日には仕事仲間とランチや旅行に行っていた。
田中さんとの再婚前の様に、私の為に必死に働く必要もなくなり、穏やかに過ごせる自分の居場所を見つけたのかもしれない。
私との関係も今は姉妹の様になっていて、一緒に服を買いに行ったり、外食をしたりしている。
「そうか、京子さんがそう決めたなら仕方がないね。
1ヶ月に一度くらいは会って話したいと思うんだけど、それは大丈夫かな?」
「もちろんです。私が健吾さんが好きなのは何も変わっていないので」
一瞬、暗い雰囲気になったものの、母の言葉でまた楽しく会話が出来る様になった。
「樹、これからも2人で頑張ろうな」
別れ際、田中さんが樹くんに声をかけると、樹くんは母の方を向いた。
「僕の不登校が原因で父と離婚する事になってしまい、本当にすみませんでした。僕はもう大丈夫です。今の学校には友達も沢山います。どうか父と沢山会ってあげて下さい。父は本当に寂しそうでしたから」
これがあの樹くんの言葉?
1年ぶりに会った樹くんがここまで成長しているなんて。
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