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「もちろんよ。健吾さんは私にとっても大事な人だから。樹くん、成長したわね」
母が嬉しそうに樹くんを見ている。
田中さんと樹くんとは、来月また食事会をする約束をした。
田中さんが「次はこんな素敵なレストランには連れて来れないと思うけど来てくれますか?」と聞いたので、母と私は「もちろんです」と答える。
家に帰ってから母に、「いつか私が結婚してこのマンションを出て行ったら、お母さんは1人になるんだよ。
田中さんと再婚した方が良かったんじゃない?」と聞いてみた。
「その時はさみしく感じるかもしれないけど、これで良かったんだと思うわ。
樹くんは健吾さんと2人だったから、あそこまで成長出来たのよ」
「それはそうだけど。もし田中さんが別の人と再婚しても良いの? 田中さんが再婚したら、お母さんとは会えなくなると思うよ」
「それも運命よ」
と母が笑った。
母との話を終えて、自分の部屋に戻ると、自分の事を考えてしまう。
私はこの1年、何か変わっただろうか?
仕事は頑張っている。母との関係も良好だ。
会社の同僚に告白されて断った。同僚が嫌いとかじゃない。たとえ他の誰に告白されても断ったと思う。恋愛が怖い。
理由はわかってる。
涼に約束した事を果たしていないから。
樹くんの成長した姿を見た今、私は涼とファンに全てを話すべき時がきたのだと思った。
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