その男、記憶喪失につき。

1/1
前へ
/6ページ
次へ

その男、記憶喪失につき。

 自分の名前は高擶宏樹らしい。らしいというのは、今、僕の記憶はないからだ。今僕は病院のベッドに座っていた。話によると交通事故にあって運ばれたらしい。目の前の寿夏美が語った。その隣にいる警官はしばらくしてから去った。寿夏美は申し訳なさそうに謝った。僕はわからない。どんな事故だったのか?もしかしたら僕も悪かったのかもしれない。 「あの、記憶が戻るまで私が面倒みます」 寿夏美は言った。記憶がないとはいえこんな美しい女性が?と僕はいやらしい妄想をする。 「高擶さん大丈夫ですか?」 夏美は僕の顔を覗きこむ。 「あ、うん、大丈夫」 僕は言った。 寿夏美は微笑んだ。  僕の仕事は?僕は悪くなかったの?僕の家は?家族は?何も思い出せぬ。 寿夏美はマンションに住んでいた。 僕は広くて驚いた。 「自分の家みたいに住んでね」 寿夏美は微笑んだ。 「ありがとうございます」 僕は言った。ソファーに座る。 「記憶がない、どうやったら戻るのだろ」 僕は考えた。考えてもわからない。 「ねぇ、お茶でも飲んでゆっくりしよ」 寿夏美はお茶を運んできた。 「そうですね」 僕はお茶を口にする。ん?なんか?おかしい?眠気が襲ってきた。と、意識が遠退く。 ふらりとソファーに横に倒れる。 「失敗した」失敗?何を? 完全に意識がなくなった。  「殺します、大丈夫です。今度は失敗しません」 寿夏美の声が聞こえた。 僕はゆっくり起き上がる。 「寿さん···なんかおかしくないですか?」 僕はなんか巻き込まれた気がした。狙われていたのではないか?わざとひいたのじゃないか?殺すつもりで。そして失敗した。今度は失敗しません、今度は殺す?そういう事じゃないか? 「寿さん、僕を殺すつもり?」 僕は寿夏美を見つめる。 「だったらどうします?逃げます?」 寿夏美は僕を見つめる。 「いや、逃げない。寿さんの美しさに決めた、ヒーローになる」 僕は言った。それもあるか寿さんと肉体関係になりたい思いが強かった。 「ヒーロー?高擶宏樹さんが?」 「そう、寿さんの組織も潰せるようなヒーロー」 「どうして?」 「君が美しいからだ」 僕は叫んだ。 寿夏美は真っ赤になって僕を見ていた。  寿夏美は多少考えたが仲間になった。 「私が武器を用意します」 と寿夏美は言った通り用意した。 普通の銃、組織を潰す爆弾、空を飛べるジェット機(しょう、ボタンで方向上下)、仮面、軽いコスチューム、他多々有り。 ジェット機を背負って空へ飛んでいく。 聞いていた組織の真下に爆弾を落とす。 爆発がして炎があがる。  空を飛び戻る。 「ヒーローの名前決めなきゃね」 寿夏美は言った。 「夏美の組織を潰したよ」 僕は言った。 「高擶宏樹、ヒーロー、何がいいかな」 寿夏美はワクワクしている。 ヒーローが誕生した。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加