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今夜も飲み過ぎたなぁ。
あーあ、仕事、辞めてーなぁ。
会社、行きたくねー。
何か喉、渇いてきた。
コンビニにでも寄るか。
「チャラララララーン、ララララー」
「いらっしゃいませー」
夜中なのに、元気だねぇ。
ビール、ビール。
ん?おでんか。
温かい物が食べたいかも。
あ!お茶も良いな。
ちょっと前に別れた元カノが、静岡出身で、良く、実家から送られてきた、美味しいお茶を淹れてくれたっけ。
お茶なんて、もうずっと飲んでないなぁ。
まあ、独り暮らしで、お茶なんて、おじいちゃんでもないと淹れないでしょ。
お茶にしよ!
何か、そんなに前の事じゃないのに、すごく懐かしいなぁ。何でだろ?
そうそう!このお茶のパッケージの俳句に載るのが夢だって、彼女、良く言ってたっけ。
彼女の名前が、あるはずないか。
おでんの具、何にしようかなー?
「チラッ」
あれ?限定の比内地鶏入り肉まん?
へー、うまそうだなぁ。
こんなの出てるんだ。
初めて見たよ!
よし!これにしよう!
これと、ピザまんと。
ピザまん、好きなんだよねー。
「スミマセン、レジ、お願いします。これとこれ、あと、そこのお茶、下さい」
「ありがとうございます!」
さっみー!
やっぱ、温かい物にして、正解!正解!
いつの間にか、もう、こんな季節かぁ。
今年もあっという間だな。
歩きながら食べるのもあれだしなー、どうしよう?どっか良い場所ないかな?
そう言えば、この辺、元カノの家の近くだったな。
良く公園に二人で散歩に行ったっけ。
あそこ良いな。そうだ、あそこにしよう!俺って良い事、思いつくなー。今夜は冴えてるじゃん!
何か彼女と別れてから良い事ないんだよなー。
あれ?あの公園、どこだっけ?
いつも、昼間、行ってたし、夜中は真っ暗だから、どこかわからないよ!
もっと、夜でも明るくしとかないと、危ないよなぁ。
彼女も帰り遅くなる事、多いって言ってたし。
ま、元カノの事を今さら心配しても、意味ないけどさ。
あった!あった!
えー?マジかよ、ここがあの公園?
やっぱ、夜に来ると当たり前だけど人は誰もいないし、印象、違うなー。
何か嫌だな。こんなところで、一人で食べるの。
あー、急に沈み込んできた!
夜中に真っ暗な公園に一人でいたら、変質者に会いそうだよ。イヤ、俺の方が変質者に間違われる可能性の方が大だな。
何でここに来たんだろー?
俺ってマジ、最悪!
さっさと、食べて帰ろう!
わー!マジかよ!悲惨過ぎる!
お茶も比内地鶏入り肉まんもピザまんも、めちゃくちゃ冷めてるじゃん!全然、美味しくなさそー!
何だよ!
もう、良いよ!
お腹が空いてるから、一応食べるけど。比内地鶏入り肉まん、イマイチだな。やっぱ、肉まんは豚だな。ピザまんは冷めても、まあ、いけるかな?
お茶もぬるいなー。やっぱ、ビール、飲みてー!
もう、家に帰るのも面倒だし、ここで寝よ。明日は会社、休もう。
何だよ!こんな、真っ暗な公園で一人で寝てる俺って。ホント、何なんだよ!俺の人生って、悲惨だなー。
「むにゃむにゃむにゃ…」
「おーい!もしもし!ここで何をやってるんですかー?」
「んん?」
「おはようごさいまーす!」
元カノの声がするなぁ、何の夢だろ?
「もしかして、あんたって、ストーカー?」
「ハッ!イヤイヤ、違うって」
「何が違うのさー。早起きして、会社に行こうとしたら、別れた彼氏が家の近くの公園で寝て待ち伏せしてるなんて、怖ーい!」
「だから、違うんだよ。たまたま、この近所のコンビニで買い物して、ここで食べてただけだって!」
「そんな事、信じられないけど?あんた、別れた時、未練たっぷりだったじゃん」
「そんな事ねーよ」
「ふーん」
「何だよ。朝早いんだろ?早く会社に行けよ!」
「あんた、会社、どうすんの?」
「今日は休もうかなぁ。ってか、もう辞めたい、辞めるよ」
「ハイハイ。いっつも辞める、辞める、って言って、ズルズルズルズル。ホントに辞める気あるの?」
「…」
「そう言うところ、全然、変わらないね」
「ごめん」
「別に謝らなくて良いよ。もう、過去の事だし」
「早く行けって。遅れたらヤバいんだろ」
「言われなくても、行きますよー。あのさ」
「何?」
「えーっと、今度、あのお茶、お裾分けしたいんだけど。あんた、あれ好きだったじゃん。高いし珍しいのだから、こっちじゃ、なかなか手に入らないんだよね」
「別にそんな事しなくても良いよ。お茶なんて、どこでも一緒だよ」
「何よー、その言い方。あのお茶はホントに特別なんだから!」
「まあ、お茶はすごく美味しかったよ。でも、さっき、お前も言ってたけど、ほら、俺、未練タラタラじゃん。だから、そう言う事はあんまりして欲しくないんだ」
「そっか、何か、ごめんね」
「俺も今ならギリギリだから、家に帰って会社に行くわ」
「うん、そうした方が良いよ」
「じゃ」
「行ってきます」
眩しい朝の光の中を走っていく、彼女はまさに光だな。
そう、彼女こそが、俺を唯一、照らしてくれる光だったんだ。
光がなくなったら、俺は暗闇に落ちていくだけか。
はぁ、また、新しい出会いがあると良いなぁ。
ま、何とかなるでしょ。
さ、急いで帰って、会社に行くか。
ああ!朝の光って、こんなにも眩しいのか。彼女は毎日、朝早く出かけていたから、光輝いていたのかもなぁ。
俺も明日から早起きしようかな?
早起きは三文の徳、って言うし。
朝日を眺めながら歩くと気分も良いなー。
今日は何か良い事あるかな?
「よし、俺もがんばろう!」
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