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視界がぼんやりしてきたと思えば、また白い空間に戻ってきていた。
「どうだった?」
はじめの、ひょうひょうとした声が聞こえた。
「自分が死んで悲しむ人間なんていないとでも思ってた?」
彼の馬鹿にしたような言い方に、むっとする。
「……俺には関係ない。どうせ俺が死んで、しばらくすれば、俺のことなんて皆忘れるよ」
「ふうん。そっか。じゃあ、次に行こうか」
「次?」
「うん、何も一回だけなんて言ってないだろ」
大きなため息が出た。何だかこいつのペースにはまっている気がする。
「今度は誰に会うんだ」
俺が言うと、彼は腕を組んで考える表情を見せる。
「それは言えない決まりなんだよ。ただ、さっきとは違う人、時間も少しだけ戻るから」
「時間が戻る?」
「ああ。ほら、さっきと同じように扉をくぐって」
彼が指さす方向には、新たな扉が出現していた。
「じゃあ、いってらっしゃい」
彼が笑顔で手を振っている。俺は無視して扉に向かう。
じっと扉を見つめる。何だかさっきよりも一回り大きい気がする。俺は腕に力を込め、扉を押した。
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