さおりとのこと

5/5
前へ
/32ページ
次へ
さおりはTVを見て驚いた。なんなの?これは。 慌てて準也に電話するが、全然出ない。 今日ここに来るって行ってたけど、やばいって。もし、ここが知られてたら。 大変なことになるじゃん! ピンポーン チャイムが鳴り、心臓がドクドクと鳴った気がした。報道の人がたくさん来てたらどうしよう。 「…どちらさま?」 「さおりー!準也だよー」 「…準也、入って」 なんて脳天気なんだろう。何も考えなさすぎ。 ドアを開けて、部屋に招き入れる。 「ねぇ、TV見たんだけど…」 「うん!社長に頼んで記事にしてもらったよん!」 「は?」 「えへへ」 「な、なんでそんなことしたの?」 「ふふー!はいこれ新聞!」 準也から英語の書いてある新聞を受け取った。 「さおりとのこと、みんなに知って欲しかった。そしたらなーんにも隠すことないでしょう?これで、モデルのみんなとも仲良くできるよー!隠し事ないし!」 「…」 「あれ?さおり?」 新聞を見つめた。英語、難しい。 「準也は、お節介だ」 「え?」 お節介の意味が分かっていないようだ。 「あ、新聞読んだ?大学のことまで書いてあるんだよー」 「これ?琉球って書いてある気がする」 「うん、そーでーす。日本の記事にもちゃーんと書いてあるよ。社長にお願いしたから」 日本の新聞も持っていたらしく、バックから取り出した。 「えーっとうーん、なんかプレイボーイ準也って書いてあるね」 「他読めないの?かして」 出会ったときからの経歴まで書いてある。こんなに丁寧に。 「漢字苦手だー」 「ふーん、プレイボーイだって」 「それは友達に頼まれて写真撮らせてあげてたのにー」 「で、これには結婚したいって書いてあるんだけど、本当?」 「うん、本当。さおりは俺と同じ古屋(ふるや)になるんだよ。一緒に住みたいな?さおりはどう?」 「でも、準也は忙しいでしょ?」 「うーん、モデルの仕事は忙しいけど続けたいしー。さおりも続けるしー。さおりがアメリカに住むのも無理だしー」 「私、モデル辞めたい」 「えーもったいないよ?」 「私はもう…沖縄に帰りたい!」 初めて、本音が出てしまった。 「でもさーモデル辞めるのはだめ。沖縄に住んでさ、そっちの事務所でモデルしたらいいよ。俺はそこの専属のカメラマンだしぃー!」 「それって、すぐにでも結婚してくれるってこと?」 「うん、嫌かな?社長はいいって言ってたよ」 「ほんと?」 「沖縄で、一緒に住もう?」 「うん」 自分からは決して言えないことを、準也はなんの考えなしに言う。そこが、彼のいいところ。 「じゃあ、社長とおじさんに報告しないとね」 「長山さん、怒るかも…」 「親戚になるんだからいいじゃん!ね?」 「…なんか微妙」 「社長はこっちいないから、まずはおじさんの家に行こう!」 「えー家知ってるの?みんな知らないのに?」 「だから、親戚なんですー。おじさん喜ぶかなー」 「言いにくい…私けっこう長山さんにひどいこと言ってたし、わがままし放題だったし」 「大丈夫。準也が選んだんだから間違いないって言ってたよ」 初めて、長山さんに申し訳ないと思った。準也の勧めでモデルになった私を有名にしてくれた。準也の親戚っていうのを隠して、私と一緒に活動してくれた。 「さーって、行くよー」 「ちょっと、ちゃんと変装しないと!」 「えーさおりったら偉い」 「準也って目立つんだから!」 「えーそう?」 私は不器用だけど、そんな私を愛してくれる準也のことが 大好き。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加