お土産

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お土産

「ひっさしぶり~」 「わー!準也さん!待ってました!早く撮影を!」 「ねー美月くん、その前に~お茶にしよ?」 「や、でも…」 「あ、そうそう!お土産あるんだよー?」 「え、珍し…」 「みんなーお茶しよー!」 カメラマンでスタイリストな準也さんは、相変わらずマイペース。締め切り近いのに呑気である。 「ふふーん!俺、東京行ったんだ!」 「へぇー、白河さんに会いに行ったんですね」 モデルのみとちゃんは馴れ馴れしい。 「違うよ?みとちゃんたちの言ってた学食食べにね!」 「まじですか!えーどこの大学?」 みとちゃん、そんな話いつしたんだ…。 「そーれーは!俺の親戚が通ってる東京大学でーす!どーだ!」 「へー!で?うまかったですか?」 「うん!なかなかにね!もーたくさん食べ過ぎちゃったよー」 あの…一応というか本職はモデルなのに、そんな食い倒れツアーに行ったんですか?しかも白河さんに会いに行くのではなくて。 「でもーみとちゃんはまだ20歳じゃないからお酒だめだよ?」 「え!お酒もあるの!?うそーリッチー」 「あの…盛り上がってるところ悪いけど、みとちゃん…撮影しないと」 「あー!そうそう!お土産!」 みとちゃんに話しかけたのに、準也さんに遮られた。 「はい!これ」 準也さんの差し出したものは、東京で有名なお菓子であった。 「わーありがとうございます!」 みとちゃんは喜んでるけど…俺は正直見飽きた商品でがっかりした。もっとセンスのいいもの買ってくるかなと思ってたし。 「あとー、実家に帰ったからそのお土産もあるよ!」 「えーまじですか!やったー」 紙袋から取り出したのは… 「アロハシャツ?」 「あー!これは俺のでした!あ、さおりにチョコ買ったけどー、ここにはなかったよ!みとちゃんごめんねー?」 「別にいいですよー?そんなことだろうと思ったし」 みとちゃんは、さらっとひどいこと言った。準也さんはこう見えてめちゃ有名なモデルなんですよ?イケメンの! 「ん?」 聞いてなかった…よかった。 「美月くん、この部屋暑いね?」 「え?あ、そうですか?」 「このジャケット暑いからあげるー。飽きたしー」 「え?」 「じゃー撮影しよー」 この手にあるのは、今の今まで準也さんがいけてる着こなししてたやつで? しかも高級なやつで!? ま、まじ!? いきなりのプレゼントに驚いたが、ふと気づいてしまった。 俺の身長では、このジャケット…無理。 「あの、準也さん…」 撮影を頑張る準也さんに問いかける。 「んー?なになに?」 「このジャケット、俺にはでかすぎます」 「んー?あ、そっかー小さいもんねー美月くん。あー奥さんは?」 「な、なんで…」 確かに雪なら…でも男物だよ? 「だって美月くんより男らしーじゃん?さおりもおにーちゃんみたいって言ってたしー」 「雪は、女の子ですよ?さすがにこれは着せられません!」 「よーし、みとちゃんOK。ん?美月くんなに?」 なんで聞いてねーんだよ! 「あの!」 「さて、お腹すいたねー」 「こ、これ」 「ん、じゃー帰るねー!」 え、何事もなかったかのようにジャケットを持って去って行ってしまった。俺は悩まされたのに! 嬉しかった贈り物が、モヤモヤした気持ちにさせられるとは…恐ろしい。 「美月さん!残念でしたねー?」 「なんで…」 「だってせっかく超有名人から服もらえそーだったのにー。私なら家宝にしますけど?」 「そう、だよね。別に着なくてもよかったのに…なんで俺は…」 あーあ、準也さんの気を悪くしてしまったかな…。 「忘れ物ー」 うわ、再び準也さん。 「これないとやばかったし!」 そう言って見せたのはパスポート。 え? 「もう帰るんですか?」 「うん!仕事だしね!」 普通に沖縄に借りてる自宅に行くかと思ってた。 「あー美月くん!今度、似合う服買ってきてあげるから!元気出して!」 俺が励まされる始末。 はぁーあ。いつも準也さんには振り回されてばかりだ。
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