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このあたりは数年前から開拓が始まったようだけど、まだまだ道半ばといったところ。ほとんど未開の地。
私たちは、今日からこの開拓の仕事に加わる予定だ。東京で呉服屋をやっていた時の奉公人たちが二人だけついてきてくれることになっていて先に現地入りしているけれど、それでも大変なことに変わりはない。十歳の弟・栄吉もまもなく働き手として駆り出されるだろう。かわいそうな栄吉。いや、最初からそういうものと思えばそうでもないのかも。
私は栄吉ほど素直にはできてない。自分で言うのもなんだけど、難しいお年頃ってやつだ。古今東西、十五歳とはそういうもの。だと思う。それに、「難しいお年頃」じゃ済まされない事情が私にはある。
本当なら、春から女学校に進学する予定だったのだ。呉服屋「白河屋」の娘として大手を振って入学するはずだった。袴とブーツに身を包んで、颯爽と東京の町を歩く自分を想像しては、ワクワクした気持ちになっていたというのに。吉原に売られなかっただけ、マシだと思うしかない。
「白河屋」は潰れたのだ。というか、やむを得ず潰した。きっかけは、一年前に母さまが番頭の庄之助と一緒に駆け落ちしてしまったこと。
真意の程は誰にもわからないけれど、女中たちの話によれば、庄之助は丁稚だった頃から母さまと幼なじみのような形で育ったから、父さまと結婚した後も、母さまと庄之助は心が通じあっていたのではないかという話だ。
庄之助は、独立するしないでおじい様ともめていた。そうしたら、ある夜、夜逃げしてしまった。お店の売上金を全部持ち逃げして、母さまを連れて。
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