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「夢で見た記憶」と「事実」
これは北海道小樽市の祖父母の家で起こりました。
「お母さん、あのね?夢を見たんだけど、変なの」
私はそう、祖母と話していた母に声をかけました。
母は祖母に「ちょっとごめん」と言い、私に何が起きたのかを聞いてくれました。
そこで私は、母と祖母に夢で見たことを打ち明けました。
「うん......あのね?お母さんのお腹の中だと思うんだけど......なんかわかんない水に浸かっていてね。赤ちゃんみたいに丸くなってるの」
母と祖母は私のその言葉に目を見開き、互いと私の顔を見やりました。
なんかマズかったかと思ったのですが、母は温かく、私を包むように言いました。
「お母さんのお腹の中だと、なんで思うの?」
私はその問いかけに、素直に、「だって、お兄ちゃんとお母さんの話してる声が聞こえたから。お兄ちゃんがお母さんに、『もうすぐ産まれるの?』って聞いて、お母さんが『うん、そうだよ。真人の妹か弟が出来るんだよ』って答えてんの。それよりも気になるのがお水。なんで私はお母さんのお腹の中で、しかもお水が中にあったの?」と私は母に問い詰めました。
母は観念したように話し始めました。
「弘枝。これはまだ、2歳のあんたには気が早い話だけど、その水は羊水と言って、赤ちゃんが生きていくのに必要なお水なんだよ」
母の言葉に私は、「ようすい?」と首を傾げましたが、どこかで府に落ちました。
つまりは、私の産まれる前の記憶......それも覚えてない子供がいる中で、私はそれを「夢」として見たのです。
最初は信じられませんでした。
けど、母はどこか落ち着いたように、私の手を取ると、「良い?この話は、お母さんと弘絵だけの秘密。これっきり、一切他の人に話さないこと。良いね?」
と私の両手を少し強めに握りました。
当時の私は母の言葉に「なんで?」と聞きましたが、母の次の言葉で頷きました。
「弘絵はそれを話して、馬鹿にされたい?馬鹿にされたくなければ、黙って、他の子と同じように過ごしなさい」
その言葉に私は、この事を他言しない事を母に約束しました。
それが私、弘絵の一番最初の記憶、2歳の頃の事です。
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