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「ねぇ、花音、私、早苗ちゃんと一緒に、芦屋の家に帰ろうと思うの。随分長い間、ほったらかしにしていたでしょう。あそこなら空気は綺麗し、早苗ちゃんと二人で色んな話をしながら、暮らして行こうと思うの」
「ママ……、まだ通院もあるのに......遠すぎない?」
花音の母は、いつの間にか、早苗さんから早苗ちゃんと、言う呼び方に変わっていた。
「さん」から「ちゃん」に変わっただけなのに不思議と心が温まってくる。安心感が生まれて来る。
「大丈夫よ。大友さん達がいるし、それからチャッピーも 連れていくわね」
「え、チャッピーも?」
「当たり前でしょ。あなたはニューヨークに行くんでしょ? お出かけもたくさんするでしょうし。ママに会いに来る暇もなくなるわよ。でも時々は二人で遊びに来てね」
「ママ、でも、さっきは……」
「もちろん、それも本当の気持ちよ。でも、二人の時間も大切にして欲しいわ」
「お式はニューヨークからも戻ってからでしょ? ママとっても楽しみだわ。ドレス選びはママたちも連れて行ってね」
「ありがとう。でも、ママ、私がいなくてもリハビリ、ちゃんとしてね」
「もちろんよ。そうだわ。ママがちゃんと出来てるか、早苗ちゃんに、報告してもらうのはどう?」
「お母さんに? いいアイデアだわ」
花音が「そうしよう」と言うようにポンと手をたたいた。
「お母さん、ママをよろしくお願いします。ママはしっかり者で、とっても強いけど、ちょっと、大雑把なので、わたし、とっても心配なんです」
「「はい! 花音ちゃんも賢の事宜しくお願いいたします」
古城の母は少し遠慮がちに、花音に言った。
「こちらこそ、宜しくお願いいたします」
花音も感謝の気持ちを込めて、丁寧に頭を下げた。その姿に、花音の母は幸せそう顔をしてニッコリ笑うのだった。そして、両手を差し出して愛しい娘を強く抱きしめると言った。
「花音、幸せになるのよ!」
「はい、ママ、私、幸せになります。大好きな旦那様と一緒に」
そういいながら、花音が未来を見つめるような笑顔で古城を見ると、さわやかに笑い返してくれた。
了
最後まで読んでいただいて有難うございました。
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