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「お爺ちゃん、びっくりするでしょうね」
「そうだね。いい時間に着きそうだね。閣下が朝食を終えて、庭を散歩してる頃だから……」
花音は、囲碁仲間とは聞いてたが、同じことを考えていたので驚いた。
おじいちゃんはお庭の東屋で独碁を打つのが好きなのだが、古城さんはそこに通されているんだ。
「そうですね。おじいちゃんはお庭で過ごすのが大好きなんです。あのお庭は、おばあちゃんがずいぶんこだわって作ったそうです」
「そうなんだ。僕はまだ、おばあさまにお会いしたことないんだ」
古城が少し不思議そうな顔をしたので
「あ、おばあちゃんは、私が小さいころに亡くなったんです……」
花音は祖母のことを思い出したのか、寂しそうな顔をした。古城が掛ける言葉を迷っていると、
「あっ、お爺ちゃんの家が見えてきました」
と言ったが、門までは距離がある。
重厚な門構えの日本邸宅の前で、タクシーを降りる。門はすでに開かれていて、客人を待ちかねているようだった。
年配の女性が、出迎えてくれた。
「あ、佳代さん! おはようございます」
佳代さんは、ここで長く勤めている人で、花音にとってはおばあちゃんのような人、花音の母もこの人には頭が上がらない。
「お嬢様、……あら、古城様! 会わせたいお方というのは古城様ですか? まあ! さあ、はやく御入りください。今か今かと首を長くしてお待ちになっておいでですよ」
「おじいちゃんはお庭に?」
「いいえ、居間でお待ちです」
「てっきりお庭かと思ったわ」
「お庭においででしたが、お嬢様が紹介したい人がいると仰ったからですわ」
「そう……」
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