第5章

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「ううむ。やめたやめた。めでたい話に水を差すのはわしの趣味ではないからな」 「じゃあ、いいの? おじいちゃん!」 「もちろんじゃ、幸せになりなさい」 「はい! おじいちゃん。ありがとう!」 花音はおじいちゃんに抱きついた。 「よしよし」 おじいちゃんは花音を小さな子供のように頭を撫でた。古城のほうを見ると、 「大垣にはもう話したのか?」 「はい」 「あやつは、今、日本かの?」 「いえ、しばらくアメリカにいらっしゃると思います。わたしも近日中に行くので、その折に報告するつもりです」 「そうかそうか、あいつの驚く顔が見れぬのが残念じゃわい」 おじいちゃんの言葉に古城も笑った。 「お前、この後、予定はあるのか?」 この質問には、花音が答えた。 「はい。お母さんの退院の手続きをしに大阪へ戻ります」 「退院? 美恵子がか?」 「あ! ごめんなさい。あのね、ママ、手術を受けて、もう心配ないの。古城さんのおかげで!」 花音はこれまでのことを話した。 「そうか。お前のおかげで大きな借りができたな。ありがとう」 おじいちゃんは目に涙を浮かべながら。古城の手を握った。 「本当にありがとう」 花音が申し訳なさそうに、 「連絡しなくて、本当にごめんなさい」 「よいよい。それはお前の父親のすることじゃ。お前の父親は知っておるんじゃろ?」 「あ、……はい」 「全く、仕方のない奴じゃ……だからダメなんじゃ」 花音はおじいちゃんの不機嫌な様子を見て、花音は、 (パパも大変だったのかもしれない。おじいちゃん、難しい所が一杯あるから……) そう考えると、なんだか父を身近に感じてくるのだった。 「そうか、では行きなさい。母さんを頼んだぞ」 「はい。行ってきます」
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