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「ううむ。やめたやめた。めでたい話に水を差すのはわしの趣味ではないからな」
「じゃあ、いいの? おじいちゃん!」
「もちろんじゃ、幸せになりなさい」
「はい! おじいちゃん。ありがとう!」
花音はおじいちゃんに抱きついた。
「よしよし」
おじいちゃんは花音を小さな子供のように頭を撫でた。古城のほうを見ると、
「大垣にはもう話したのか?」
「はい」
「あやつは、今、日本かの?」
「いえ、しばらくアメリカにいらっしゃると思います。わたしも近日中に行くので、その折に報告するつもりです」
「そうかそうか、あいつの驚く顔が見れぬのが残念じゃわい」
おじいちゃんの言葉に古城も笑った。
「お前、この後、予定はあるのか?」
この質問には、花音が答えた。
「はい。お母さんの退院の手続きをしに大阪へ戻ります」
「退院? 美恵子がか?」
「あ! ごめんなさい。あのね、ママ、手術を受けて、もう心配ないの。古城さんのおかげで!」
花音はこれまでのことを話した。
「そうか。お前のおかげで大きな借りができたな。ありがとう」
おじいちゃんは目に涙を浮かべながら。古城の手を握った。
「本当にありがとう」
花音が申し訳なさそうに、
「連絡しなくて、本当にごめんなさい」
「よいよい。それはお前の父親のすることじゃ。お前の父親は知っておるんじゃろ?」
「あ、……はい」
「全く、仕方のない奴じゃ……だからダメなんじゃ」
花音はおじいちゃんの不機嫌な様子を見て、花音は、
(パパも大変だったのかもしれない。おじいちゃん、難しい所が一杯あるから……)
そう考えると、なんだか父を身近に感じてくるのだった。
「そうか、では行きなさい。母さんを頼んだぞ」
「はい。行ってきます」
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