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おじいちゃんは古城に向き直り、
「花音の事、頼むぞ。わしの一番の宝物だからな」
「私にとっても宝です。大切にします。では、失礼いたします。閣下」
「ああ、待て待て、これからはお前とは家族になるんだ。閣下ではなく爺さんと呼びなさい。堅苦しくていかん」
古城は困ったようにあいまいに笑って頭を下げたが、 顔を上げるとはっきりと言った。
「では、行ってきます。爺ちゃん」
おじいちゃんは満足そうに、うんうんと頷いて言った。
「それから、わしの車で行くと良い」
「タクシーを待たせていますので、大丈夫です。では」
彼は丁寧に礼をした。
おじいちゃんの顔を見ると、なんとも寂しそううな顔をしている。
「お爺ちゃん。また来ますね」
花音が元気良く手を振ると、満面の笑みで振り返してきた。
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