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薬漬けの頭でも理解できたのか、悔しそうに顔をクシャクシャにすると、手足をばたつかせて怒鳴り散らした。
「クソが! 殺すぞ~! お前はどこの誰や。調べ上げたる」
「調べればいい。私もあなたに言う名前なんか持ち合わせてない。お母さんや凛ちゃんを傷つけて、それでも当たり前の顔をして、のうのうと生きているあなたなんかに!」
「お前、凛の知り合いか?」
「そうよ。私と凛ちゃんは親友よ。私のたった一人の親友よ。だから、あなたをその窓から、突き落としてやりたいという気持ちだわ」
「畜生め~」
花音が背を向けると、
「こら、お前、どこ行くんや! ババアを置いていけ!」
花音は振り返りにっこり笑うと、笑いながら言った。
「もうお母さんは、あなたとは何の関係もなくなったのよ。ほら、この紙1枚でね.
これ以上、お母さんをいじめるつもりなら、今撮ったあなたの写真をネットにあげるから、覚悟していてね」
「何を~」
宣子の吠えるような声を無視して花音が言った。
「あなたがする事は、早くここを出られるように、先生方の言うことをよく聞いて、治療に専念することよ」
「なんや偉そうに! クソが! やかましいわ! ババァ置いていけ! 殺すぞ。その顔、忘れんからな!」
「もう会うことはないと思うけど……」
「待たんか!」
口ばかりで動こうとしない。怒鳴ってばかりだ。
「さよなら」
そう言って、花音は宣子に、にっこり笑うと病室を出た。
二人が出て行った後、古城は苦汁をなめさられた男の娘を一瞥した。何かをブツブツ言っている。どこか虚ろで鋭い目をギョロギョロさせて、頭を掻きむしっていた。
「行きましょうか?」
花音が心配そうに振り向いた。
「ああ」
古城は、花音に促されて病室の扉を閉めた。
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