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古城の母は少しオドオドしている様子だった。それに気づいた花音の母が、
「ああ、ごめんなさい。名乗りもせずに……私は花音の母で、伊藤と申します」
「あ、はい。私はあの…」
古城の母は、申し訳なさそうにチラッと古城を見た。古城は知らん顔している。次に花音を見た。花音はうなずいた。古城の母は潤んだ目でしっかり花音に頷いてから、
「古城早苗と申します」
古城の母はそういうと、うつむいた。
「あの、助けていただいて、本当に有難うございます」
古城の母は、そう言うと深く頭を下げた。
「失礼ながら、ご事情は伺っています。これからのことはゆっくり考えましょう……。もう、私たちは、もう家族なんですから」
「え? 家族?」
古城の母が驚いた顔をした。
「え? 花音?」
花音の母が花音を見た。
「あ……」
そうだったというように、口元に手を当てた。
「ダメじゃないの」
「ごめんなさい」
そう言うと、花音は古城の母に向き直り、丁寧に頭を下げた。そして、深呼吸すると
「あの、ご報告が遅くになって申し訳ありません」
古城の母は、うるんだ目で花音と古城を見つめて小さくコクコクと頷いた。
「私たち結婚したんです」
「まあ! 本当に? 花音ちゃんと?」
古城の母は泣き笑いになってポロポロ涙をこぼした。
「助けてもらった上に、こんな嬉しいことまで。ありがとう。ありがとう。本当にありがとう……ございます! うう」
古城の母は涙が止まらない様子だった。
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