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「早苗さん、私たちは、家族なんですもの、これからは気兼ねなく接してほしいの」
花音の母の言葉に、古城の母は遠慮がちにお礼を言った。
「有難うございます」
「何言ってるの。早苗さんは、こんな素敵な息子さんを生んだのよ。もうそれだけで素晴らしいわ」
そのこと言葉を聞いて古城の母は苦しそうな顔をした。
「でも……わたしは、母親だというのに、この子たちに償いきれない罪を……」
「早苗さん、くよくよしたって時間はもう戻ってこないわ。前を向いていくしかないのよ。私と一緒にこれからのことを考えましょう」
花音の母は、しっかりと古城の母を抱き締めて言った。
早苗は何度も何度も頷いた。
「ふふ、じゃあ、そろそろ行きましょうか!」
花音の母の言葉で、みんながゆっくりと歩き出した。しばらくして花音が古城に、
「有り難うございます。側にいてくれて、とても心強かったです」
嬉しそうに話かける花音に、優しく笑いながら言った。
「こっちこそ、君の強さに驚いたよ! 僕の出番はなかったね」
花音は嬉しそうにうなずいた。そして、急に暗い顔をした。
「どうしたの?」
「でも、言いすぎたかもしれません」
「何が?」
「あの女の人に悪いことしたなんて思ってません。もっとひどい目に合ってほしいくらいです。でも……あの人、訴えを起こすでしょうか……。もし、そうなったら、凛ちゃんのことが公になるかもと思うと、怖いんです」
「…………」
古城は黙ったままだ。
「戦う人もいますが、私が、凛ちゃんなら、人に知られたくないと思うんです」
「大丈夫だよ。花音があの女に言った通り、あの女の父親は何もできないよ。心配いらない」
古城の静かな物言いだが、相手を有無を言わせないような迫力に、花音は押し黙った。
いつもの古城とは違って花音はドキッとした。
古城とあの女の父親とのやり取りは分からない。でも、花音は古城の様子を見て、大丈夫なのだと確信した。
「それに、君のあの迫力に、あの女も何もしないさ」
「本当?」
「うん。本当! これは一生座布団だなって思ったね」
「もう!」
花音は、ぷうと頬を膨らませた。
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