第5章

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「早苗さん、私たちは、家族なんですもの、これからは気兼ねなく接してほしいの」 花音の母の言葉に、古城の母は遠慮がちにお礼を言った。 「有難うございます」 「何言ってるの。早苗さんは、こんな素敵な息子さんを生んだのよ。もうそれだけで素晴らしいわ」 そのこと言葉を聞いて古城の母は苦しそうな顔をした。 「でも……わたしは、母親だというのに、この子たちに償いきれない罪を……」 「早苗さん、くよくよしたって時間はもう戻ってこないわ。前を向いていくしかないのよ。私と一緒にこれからのことを考えましょう」 花音の母は、しっかりと古城の母を抱き締めて言った。 早苗は何度も何度も頷いた。 「ふふ、じゃあ、そろそろ行きましょうか!」 花音の母の言葉で、みんながゆっくりと歩き出した。しばらくして花音が古城に、 「有り難うございます。側にいてくれて、とても心強かったです」 嬉しそうに話かける花音に、優しく笑いながら言った。 「こっちこそ、君の強さに驚いたよ! 僕の出番はなかったね」 花音は嬉しそうにうなずいた。そして、急に暗い顔をした。 「どうしたの?」 「でも、言いすぎたかもしれません」 「何が?」 「あの女の人に悪いことしたなんて思ってません。もっとひどい目に合ってほしいくらいです。でも……あの人、訴えを起こすでしょうか……。もし、そうなったら、凛ちゃんのことが公になるかもと思うと、怖いんです」 「…………」 古城は黙ったままだ。 「戦う人もいますが、私が、凛ちゃんなら、人に知られたくないと思うんです」 「大丈夫だよ。花音があの女に言った通り、あの女の父親は何もできないよ。心配いらない」 古城の静かな物言いだが、相手を有無を言わせないような迫力に、花音は押し黙った。 いつもの古城とは違って花音はドキッとした。 古城とあの女の父親とのやり取りは分からない。でも、花音は古城の様子を見て、大丈夫なのだと確信した。 「それに、君のあの迫力に、あの女も何もしないさ」 「本当?」 「うん。本当! これは一生座布団だなって思ったね」 「もう!」 花音は、ぷうと頬を膨らませた。
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