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「お母さん、これでこの人とは、何の関わりも無くなったのよ。良かったぁ!」
花音と古城の母は、離婚用紙に書かれた男の名を見ながらそっと抱きあいどちらともなく泣き出した。
花音は声を出して、古城の母は心の中で声を押し殺して泣いた。
二人が手を握ったり見詰め合ったりする姿に、互いを思い合い、労わり合っているのが分かる。
花音の母はそんな二人を温かい気持ちで見ていた。そして自分が入院している間、古城の母が花音を支えてくれていたのだと痛感した。
古城も自身に問いかけていた。
自分は母親を憎み続けていたが、それは、ただ母に甘えていただけでは無かったのか。
現実から目を背けていたのは自分ではないのか。
あの時、母と妹を守らなければならないのは自分だったのに、逃げ出した自分こそが、卑怯者だったのではないか
再婚相手の奴隷のような扱いに耐え続けた母。
重い病気の母に死が迫っていることを感じながら、寄り添っていた花音。
自分が辛い境遇から逃げた後、母を支えてくれたのは花音だ。
そして意地になっていた自分を諭してくれた花音。
母が古城の視線に気づき、遠慮がちに笑いかけてきた。
古城が笑い返すと、母は驚いたような顔をした。そして、泣きそうな顔になり、すぐに幸せそうな顔で笑い返してきた。
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