第5章

165/166
前へ
/298ページ
次へ
「早苗さん、私、いいこと思いついたわ」 「まあ、なんですか?」 「ふふ」 花音の母は早苗に笑いかけると、花音に向き直った。 「あなたたち、早く、孫の顔を見せてね」 「マ、マ、ママママ」 驚いて、どもり癖が戻ってしまった花音。 「ねえ、早苗さん、孫ができたら、花音たちと一緒に可愛い孫の成長を見守って行きたいわよね」 「はい!」 「だって、ママたちも、一緒に子育てしたいわ。ダメ?」 「もちろん嬉しいけど......、いきなりそんなこと言うから、ビックリしたの」 「ふふ、ごめんね。私の人生の中で一番素晴らしいことは、花音を生んだことだわ。だから、どうしても言いたくなったの」 「ママ」 花音はジーンとした。 「ママは、仕事ばかりで花音をほったらかしだったでしょう? すごく後悔してるの。何より花音に申し訳なかったわ。そのうえ、病気で一緒にお出かけどころか看病ばかりさせて……」 「ママ、そんなことないよ」 「花音を娘に持って、ママは本当に幸せだわ。こんなに素晴らしい人と結婚してくれて、ママ、本当に嬉しいわ」 花音の母は、古城に向き直ると、 「花音のこと宜しくお願いします」 花音の母が丁寧に頭を下げた。古城もそれに倣うように頭を下げると、 「こちらこそ、至らぬと事のほうが多いですが、宜しくお願いします」 と言った。
/298ページ

最初のコメントを投稿しよう!

93人が本棚に入れています
本棚に追加