テストに夢中

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テストに夢中

テスト用紙が配られる。 しんと静まり返った教室の中で、試験監督の 「試験時間は五十分です」 という冷たい声が響き渡った。 鐘が鳴る。 この日のために僕は勉強に明け暮れ、昨夜は徹夜してまで英単語を頭に入れてきたのだ。 いざ試験用紙をめくってみると、なんということか。 僕の覚えた内容がそっくりそのまま、テスト用紙に印刷されている。 僕は飛び上がらんばかりに喜んだ。 これでテストは満点だ。 はっと目を覚ました。 試験開始から十分ほどすぎている。 あまりの睡魔に満点を取る夢を見ていたようだ。 危ない、危ない。 気を取り直して、試験用紙に向かう。 思いつく限りに解答用紙を埋めていく。 8割ほど埋めたあたりでシャーペンを置いた。 これだけ取れれば問題ないだろう。 もう一度、解答を見直す。 問題なし。 見直しも完璧だ。 それはそうと、大学入試3回目の僕は過去の敗因を思い出す。 1回目は完璧な勉強不足だった。 2回目は緊張による腹痛でリタイア。 だが、今年ばかりは一味違う。 徹夜してまで取り組んだ勉強。 緊張しないようにと、準備は万端。 体調にも気を付けた。 何しろ3回目だ。 テスト終了時間が迫ってくる。 僕は毅然としてその時を待った。 どこか遠くで鐘がなる。 はっと目を覚ました。
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