オフ会

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オフ会

男は、頭を抱えていた。 ついにこの時が来てしまった。 男は数時間後、とあるゲームで知り合った女性とリアルで会う予定になっている。 しかし男には、一つだけ大きな問題があった。 それは、自分が男としてではなく、女としてそのゲームにログインしていたこと。 今までは何とか、会話でごまかしてきたものの、出会ってしまえば一発でばれてしまう。 どうしようかと、頭を巡らせた結果、一つの改善策にたどり着いた。 遠目から顔だけ見て、そのあとは何とか理由をつけて帰ってしまおう。 そうして、男は待ち合わせ場所から少し離れた、花壇の陰に潜伏した。 しかし、待ち合わせ時間から十分がたっても二十分がたっても、待ち合わせ場所には誰も現れなかった。 すっぽかされたのかもしれない。 やがて、待ち合わせ時間から三十分が過ぎ、あきらめもついた男は花壇の陰から、体を起こすと駅へとぼとぼと歩き始めた。 そのとき男は気づいた。 待ち合わせ場所から、少し離れた反対側の花壇の陰に、自分と同じように冴えない顔立ちをしている男が、座り込んでいるのを。 男は、嬉しいような悲しいような、よく分からない表情を浮かべながら、その男の方へ歩き出した。
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