愛し方の例1

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愛し方の例1

※この話には一部、流血・自傷・グロ表現が含まれています。  苦手な方は、ご遠慮ください。 私は、薄暗い玄関先でうっすらと笑みを浮かべた。 今日は、お気に入りの黒とピンクのチェックのワンピース。 髪はまっすぐ、ストレートで寝癖一つない。 メイク崩れもなし。 お人形さんのように、完璧だ。 君がアパートの廊下を歩く音がした。 鍵が回される音がする。 笑顔で迎えた。 「おかえりなさい」 君の青ざめた顔もまた、たまらない。 ずっと、そばにいたい。 君が逃げ出さないようにと、腕をつかんだ。 「ご飯できてるよ。一緒に食べよ」 君を食卓まで誘導する。 椅子に座らせる。 「大好きだよ。ねえ、私のこと好き?」 「う・・・うん。好きだよ・・・」 「そっかぁ、私も大好き。ずっと一緒にいようね!」 君の笑顔がひきつったように見えたのは、きっと気のせいだよね? だって私と一緒にいて、幸せじゃないわけがないもん。 「ん・・・?」 君が眉をひそめてる。 気づいたみたい。 私の仕掛けた罠に。 「えっと・・・、これ、何が入ってるの?」 赤いスープを指差していった。 ふふふ。 「これはね、私の血が入ってるの」 「!?何だって?」 「血液だよ、私の。今日のためにたくさん、血を取ったんだ」 ワンピースの袖をめくった。 そこには赤い筋が二本。 「ひっ・・・」 君は悲鳴もかわいい。 「もっと飲みたいよね。待ってて、今出してあげるから」 私は、棚の上に置いてあった、カッターを手に取った。 痛いけど、我慢。 きっと、君が喜んでくれるから。 カッターの刃を柔らかい白い肌の上に、ぴとりとくっつける。 勢い良く、引き抜くと力を入れずとも、真っ赤な鮮血が台所に飛び散った。 これを鍋に入れて、弱火でコトコト。 塩を入れて、固まらないように水を足して、それから玉ねぎも入れよう。 それから、それから・・・ ふと後ろを振り返ると、すでに君はいなくなっていた。 ふふふ。 どこにいても私が必ず、見つけ出してあげるよ。
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