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仮ぐらしの蟻エッティ
僕の家の庭には、蟻が大軍を作っていた。
よくよく見るとそれは、庭の隅にある小さな穴へと連なっている。
蟻たちが声を合わせて言った。
「ここは、次の家が決まるまでのつなぎなんですわ。殺さんといてくれよな」
「そっか、別に気にしないよ」
そう僕が言うと、
「じゃあ、早速だけどストロー貸してくれない?あれがあるとトンネルが崩れにくくて、便利なんよ」
僕は蟻たちにストローを貸した。
「次は、となりにいるヤモリを追っ払ってくれない?怖くてかなわんよ」
僕はヤモリを追い払った。
「あ、そういえば、あれある?あれ」
「砂糖?」
「そうそう、それだよ。蟻って言ったら砂糖だもんな」
僕は蟻の巣の周りに砂糖をまいた。
「じゃ、次は・・・」
「いいかげん、僕からなんでも借りるのはやめてくれない?」
勇気を出して、僕は言ってみた。
すると、蟻たちは口をそろえて、言った。
「えー、仮暮らしなんだし、俺たち、すぐ出ていくで」
聞いてみると二週間ばかりの辛坊らしい。
僕は蟻たちを追い出すのをあきらめた。
しかし、二週間がたった後、蟻たちが口をそろえていった。
「俺たち、ここが気に入ったんで、しばらくはここに住みますわ。よろしく頼むで」
僕は、もう蟻たちに何も貸さないと心に誓った。
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