王道RPG

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王道RPG

いつものように勇者は、王宮に向かった。 この道を歩くのは何回目だろうか。 いい加減、嫌気がさしている。 「勇者よ。この国にいる魔物を倒して、再び国に平和を取り戻してくれ」 聞きなれたセリフ。 何度も暗唱させられている王は、すでに死んだ目をしていた。 お気の毒に。 それから、魔物を倒すために王都の外へと旅に出る。 という名目の徘徊だ。 見慣れた街、見慣れた魔物、空の色すら毎日同じ。 『スライムが現れた』 1たおす 2にげる 何度も見てるからわかる。 倒さなきゃ先に進めないよね? 何度も倒されることに疲れたスライムが、勇者に耳打ちした。 「頼むから、剣を当てたフリにしてくださいよ。昨日切られた傷がまだ治ってなくて・・・」 「了解した」 勇者も小声で応答した。 それから、しばらく歩くと、小さな村にたどり着いた。 村の住民もパッと見、笑顔で歓迎してくれているかのように見えるが、全員が疲れ切っていた。 そりゃあ、毎日毎日勇者が、同じ薬草を買いに来ていたら、疲れもするだろう。 村の経済は薬草栽培だけのモノカルチャーになってしまったらしい。 本当に申し訳ないが、これは宿命だ。 王都に一番近い、村であったことを後悔するしかないね。 やがて、勇者は様々なチェックポイントを予定通り通過し、すでに見慣れてきた魔王の城へとやってきた。 しかし、この時の魔王の城はいつもと様子が違った。 いぶかしげに城の中へと入りこんだ。 慌てているのは、魔王の側近のデビルたち。 デビルたちは勇者に気づいたようで、そろって頭を下げた。 「申し訳ありません。先ほど、毎日の理不尽な労働に嫌気のさした魔王様が、出て行ってしまいました」 さすがにデビルたちがかわいそうになった勇者は、言った。 「じゃあ、申し訳ないけど一度、私を殺してくれ。王宮で王様と相談してくるよ」
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