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恋の重さ
「こんにちは。どんな症状なんですか?」
これ見よがしに白衣を着た、医者が聞いた。
「それが・・・重いんです」
「重い?肩こりか何かですかね?」
「押しつぶされそうなくらいに、重いんです」
医者は困ったように、頬をかいた。
「良ければ、心療内科のほうを紹介しますよ。うちはただの内科なので」
私はため息をついた。
「わかりました。もういいです」
おもむろに立ち上がって、病院を後にした。
誰に話せば、この重さをわかってもらえるのだろうか・・・。
頭も痛くなってきた。
体にのしかかるように重い。
辛い。
スマホを見ると、数十件の不在着信の嵐が見えた。
ため息を一つついて、こちらからかけなおした。
「もしもし」
「ねえ、どこにいってるの?なんで俺の電話に出られなかったの?すぐに帰ってきて。知らない男にあったりしてないよね?」
「ごめん、すぐに帰る」
医者は知らない男に含まれるのだろうか・・・。
私は通話を切った。
重い。
重すぎる。
彼との恋は、私を押しつぶしてしまいそうだった。
でも私は、その圧力すらも愛している。
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