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山の中腹に建てられている教会には、『バケモノの柩』と囁かれる聖遺物箱が存在する。
『聖骸』として、1000年以上もの間、大切に安置されているものだ。
分厚いガラスに覆われ、全面に美しい生花が惜しみなく敷き詰められたそこに横たわるのは、両の側頭部から角が生えた、牛骨を思わせる巨大な頭蓋を持つバケモノ────魔族だ。
組まれた手の上には、カシの葉が一枚乗せられていた。
その柩を怖々と覗き込む者がいる。
柔らかい亜麻色の髪の少年が「大丈夫、今日も枯れてない」と呟いているのを聞いて、イヴはクスリと笑った。
後ろから、いつものようにそっと近づいて、声を掛ける。
「やぁ。今日もご苦労さまだね」
暇なら、草笛の吹き方を教えてあげようか。
バケモノの柩 end.
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