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 男は逮捕された。  証拠となったのは、やはりあずみのタイツだった。  あのあと、あずみと男は別々のパトカーで警察署に連れていかれた。  あずみと一緒に付き添ってくれた女性警察官は、警察署に着くなり、まず職員用のシャワールームを使わせてくれた。温かいお湯を浴びたところで、涙が止めどなく流れてきた。  警察署では、今回の件を事件として立件するため、いろいろと聴かれたが、相手はずっと、あの女性警察官だったから、安心だった。だからあずみは、絵梨花のことも話し、絵梨花が警察で受けた酷い扱いについても怒りまくったが、彼女は丁寧に受けとめてくれた。そして、絵梨花の被害についても立件して、追求してくれることを約束してくれた。  それから、裁判になってからのことを相談できる弁護士や、心の傷のケアをしてくれる相談機関や性暴力被害を専門にしている心療内科も案内してくれた。  本当なら、警察はここまでしないんだけどね。彼女は淋しそうに微笑んだ。  警察みんなが、あたしみたいな警察官じゃないからーー  彼女は言う。  性暴力の加害者は、自分より弱そうな人を狙う。でもね、被害を受けたほうは、何も悪くない。どんな服を着てても、どんな性格でも、だからって暴力を受けていいことにはならないの。  あなたたちは、何も悪くない。自分を責めなくていいのよ。  警察官がみんな、この人みたいだったらいいのに。  警察署を出る頃、外は夕暮れ時だった。  チラチラ、雪が降り出しているその中で、絵梨花が立っていた。  
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