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自衛するしかない。
そう結論を出した二人は、木曜日、女性専用車両に乗ることにした。
だが、その方法は叶わなかった。
何故なら、絵梨花が乗り込む駅に着く電車は全て、すでに女性専用車両は満員だったのだ。二人が乗り込む余地はなかった。
仕方なく、違う車両に乗り込んだのだったが、やはり二人一緒にいても、痴漢に遭ったのは絵梨花のほうだった。
さすがに傍にいればあずみも気づく。あずみが「痴漢! 変態!」と怒鳴ると、男は次の駅で電車を飛び降り、一目散に逃げていった。満員電車から降りることが出来ず、男には逃げられてしまった。
絵梨花は泣いていた。
その絵梨花を、周りの大人たちが好奇の目で見ていた。
誰も助けてくれなかったくせに。
あずみはその次の駅で絵梨花を下ろし、ホームのベンチに並んで腰かけた。
絵梨花はずっと泣き続けていたが、気にかけてくれる大人はいなかった。
その日は二人で学校を休み、渋谷に出て、カフェ巡りをした。絵梨花にとっては初めてのサボりだったらしい。ショッキングな出来事が続いていた反動だろうか、二人ともよく話し、よく笑った。はじめて、一緒にプリも撮った。
あずみにとって、絵梨花は、それまで親友というほどではなく、ただクラスの名簿順で前と後ろの関係だけだった。絵梨花は引っ込み思案で友だちができず、あずみは同級生がみんなガキっぽく見えて、友だちを作ってこなかった。
だから独り者同士、つかず離れず、ただのクラスメイトという関係だとあずみは思っていたのだが、絵梨花のほうは、実はかなりあずみを信頼してくれていたらしい。あずみの決断力や、流されないところが憧れだと言う。
そんな話が聞けたのも、一日学校をサボったが故の功績だった。
そしてあずみは、絶対に痴漢常習男を捕まえてやるという決心を、より強くしたのだった。
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