武人伝

1/1
前へ
/1ページ
次へ
一 ある大陸に鄭(てい)国という大国があった。大陸の北西に位置するこの国は周辺に大国を左右に挟まれる形で存在していた。 そこにある有能な将がいた名は「閑丈(かんじょう)」。 大騎馬軍の将である閑丈は鄭国の主軸の軍で活躍をして開国以後のずっと戦場で活躍していた。 彼が指揮した騎馬軍はもちろん。主要の軍の士気も大きく下がっていった。 そして、大陸全体はその後活性化されていく。いたるところで戦火は激化し鄭国も勇将が集まり始まる周辺国に領土を削られまさに滅亡の危機までに至っていた。 鄭国・国都「林安城(りんあんじょう)」 城のなかでは幹部たちや将軍らがあつまり軍議を始めていた。 「殿。獅賀(しが)との国境でまさに前線が崩壊しようとしております!今現在、阿門(あもん)将軍が総大将となり獅賀軍と交戦しておりますが、もうすでに嘉隋(かずい)・尾塁(おるい)の軍事主要都市は陥落し、阿門将軍らが破られれば獅賀軍がこの国都の喉元まで来てしまいます。どうか、策を講じてください。」 「うむ、、、。今、燕備(えんび)が国都の主要軍30000を阿門に向かわせた。とにかく、董玄(とうげん)、龍雲臥(りゅううんが)、趙晃(ちょうこう)3将と30000で迎え撃つ。 あの3将はこの私の3本刀だ。きっとやってくれる。燕備。そうであろう?」 「はい。今この国で打てる最善の布陣です。もうすでに領土は大きく削られてはいますが、見方を変えればこの最後の軍事主要都市・阿門防衛線だけで考えればこの3万でむしろ勝利できるでしょう。なにせ、この阿門は山岳都市。それだけでもこちらが有利です。獅賀軍はこの機を狙って我が国の奥まで進行していますが、軍を遠方まで進軍させる時に懸念されるのは兵糧。そして、、兵達の疲労度です!獅賀軍は現在、かなりの疲労がたまっており指揮が下がり始めている。そこを突いて、この3万でこの敵をうちましょう。」 鄭国。軍事主要都市・阿門。 その3万の軍はまさに阿門周辺にいた。 「それにしても、、すごいな、、、。こんだけ、敵に侵攻されるのは今回が初めてではないか?」 「ああ。未だかつてここで攻められたことは鄭国初だ。だが、これ以上はない。かならず獅  賀軍を返り討ちにするぞ。」 「ああ、董玄将軍。もちろんだ。俺らがいるからにはこれ以上好きにはさせん!」 すると、3将の前にある一人の伝令兵が現れた。 「3将の皆さま。お待ちしておりました。あの、、、突然ではございますがご報告することがありまして」 「ん?どうした。申してみろ」 「は、はい。昨日。ある将がこの阿門駐屯軍に加勢したいと。ここにこられておりまして。」 「誰だ?その将とは?」 (それはどう考えても不自然だろ?この軍は周りから見れば滅亡寸前の国の軍だぞ。そんな、ともに心中覚悟で志願するものなど。密偵か?) そして、3将の前に騎馬して甲冑をきた一人の将が現れた。 「久しぶりだな。3人とも。立派になって。」 「閑丈将軍!!」 「ははは!お前ら久しぶりだな!来てやったぞ援軍。」 「閑丈!!お前ってやつは!感謝するぞ。今や滅亡寸前で援軍などあてにはしていなかったがまさかお前が来てくれるとは。」 「当たり前だろ。ここは俺が若い頃から育ってきた家みたいなもんだ。それにお前達だって家族同然だ。助けにくるに決まってるだろ」 「ならば、閑丈お前に一軍の将として5000人を率いてほしい。もちろん。お前のあの 「騎馬隊」1000も入れてだ。」 「ああ、ありがてえ。あいつらとまた戦えるんだな。あんな、形で軍を後にすることになったのに。」 「閑丈。あれはしかたがなかったのだ。過去を知っている者でお前を恨んでるやつは一人もいない。とにかく頼むぞ。「閑騎(かんき)軍」」 「ああ、任せろ!」 こうして、閑丈の援軍により鄭国軍は劣勢のなかではあるが勢いを盛り返し始めていた。 そして、3日間。獅賀軍と鄭国軍の戦争は激化を極めた。 閑丈の入隊から盛り返し始める鄭国に獅賀軍の幹部たちは驚きを隠せなかった。 そして、最後の軍事都市とされていた阿門(あもん)から前線を押し出すことに成功した鄭国軍前線の者たちはさらに前線を押し上げるべく、士気を挙げていた。 そして、鄭国軍最前線拠点。その日の夜。ある一人の将軍が軍営を眺めていた。 「燕備(えんび)将軍。こんなとこにいたのか。」 「おお、閑丈。どうした。」 「別に。ひさしぶりだからよ。一杯どうだ?」 閑丈は酒を持っていた。 「おお、いいな。久しぶりにやるか。」 二人はその場で酒を酌み交わした。 「っで、奥さんと息子は達者なのか?」 「ん?ああ、元気だよ。幸せに千尊村(ちそん)で暮らしてる。よろしくいってたぜ。  麗(れい)の奴が燕備将軍に感謝しろって言ってた。」 「!!そんな、、申し訳なくてしかたがないのに。そんなことを。お前がこっちの都合で軍から退いたのに。お前は来てくれた。それだけでも感謝してもしきれんというのに」 「気にしなくていいんだよ。アンタらは。俺が決めたことだ。「軍」を守りたかっただけだからさ」 「今や、お前を追い出した文官は国を追われそいつが失策をしたせいで鄭国の衰弱を招いた。お前がいれば今頃もっと強国になっていたかもしれないにな。」 「まあ、今言ったってしょうがないだろ?嫁からも行くからには国を救ってこいって言われてるからさ。がっちりかまそうぜ。」 「ああ、そうだな。  そこで、閑丈。お前の腕と3万の援軍の利を生かして。明日、任したいことがある。」 「あ?」 燕備は閑丈に策を話した。 翌朝。晴天のなか、阿門の本陣から獅賀軍本陣の間にある密林と平原が入り組む地形である この地で燕備将軍の策よりこの戦は急激に終結の方向へ向かっていくのである。 鄭国軍最前線。 本日の戦を始めようと騎馬兵・歩兵は殺気だって今にも相手に向かっていこうとする勢いて待機していた。 その中の騎馬隊。 「閑丈様。お呼びですか?」 「おお、来たな。寿俊(じゅしゅん)。今日は任せたぞ。」 「は!お任せください。閑丈様不在の間しっかり俺が面倒見てきましたからな。こいつらはしっかり仕事しますよ。」 「心配はいりませんぞ。殿。寿俊とこの李姜(りきょう)がしっかりと殿をお守りしますゆえ。殿は依然と同様。戦場で暴れまくって下さい。」 「ああ、ありがとな。李姜、寿春。行くぞ!!」 そして、鄭国軍、中央軍の将が号令をかけ戦が始まった。 怒号と共に突進していく中央軍。そして、左軍。 「全軍突撃!!」 その号令とともに左軍が一斉に続く。 「閑丈様、行きましょう。」 「ああ、みんな今日でこの戦終わらせるぞ。全軍突撃!!」 閑丈の号令で閑丈率いる右軍。も突撃し、 鄭国軍・中央・左・右軍の三軍同時進行が開始された。 昨日の燕備将軍が考えていた秘策はこれであった。 。不利な地形による敵国の衰弱と援軍とのタイミングを見て今しかないと強硬にうって立たのである。 戦場全体で激しい斬りあいが繰り広げられる中、ある騎馬隊だけ猪突進で攻めあがる軍があった。閑丈達、「閑騎軍」である。 昨日の夜。 「それでお前にはあと一つ頼みがある。」 「なんだ?」 「明日の3軍同時侵攻。これをするからには明らかな決め手が欲しい。だから、、」 (「閑騎軍全軍で獅賀軍総大将・鋼丈覇(こじょうは)を討て!」) (燕備、、任せろ!!大将首は俺がとる!!) 獅賀軍本陣。侵攻する側である獅賀軍は本陣ごと攻めていたため閑丈達最前線軍から射程距離内にあった。その3軍同時侵攻の様子を静かに鋼丈覇は見ていた。 (やってくれたな。鄭国軍。まさか、大胆に3軍同時侵攻とは予想していなかった。だが、だからなんだ?何をお前たちは勘違いをしている。お前達は攻められる側だろうが、地の利や兵数が上回っていたとして、私たち獅賀軍の高い軍事力にかなうわけがなかろうが。 すぐにわかる、、、今のその勢いは今だけ、その後に取り返しがつかないことをしたことを!) 「中央・左・右軍。何が何でも押し負けるな!やつらの絶頂は今だけだ。長期戦に持ち込めばすぐに衰弱する。それまでまち、そこから一人残らず蹂躙しろ!」 獅賀軍も号令で士気が上がっていた。 今日の戦でも激戦が予想されていた。 鋼丈覇の元に一人の軍師が現れた。 「鋼丈覇様、今戻りました。」 「戻ったか。梅政需(ばいせいじゅ)。」 「はっ!鋼丈覇様の指示通り。あ奴らを行かせました故、今日の夜には刃が届くかと」 「ふふふっ、ご苦労。お前も戻ってすぐで悪いが布陣に着け。今日をしのげば私たちの勝ちだ。この戦今日で終わりだ、、、、」 鄭国領土・千遜村(ちそんむら) 領土の中でも小さい村にある少年がいた。 「どうだ、慶。恐れ入ったか。」 大きな子供に倒された少年。うなだれている。 「くそ、まだだ。負けるもんか。うりゃあー」 さらに倒される。 「ははは、何回やっても同じだよ。お前の親父は英雄かもしれないけどお前は俺に勝てない。」 「うるせー!!」 「はーい。そこまでだ!!」 すると村の護衛兵が仲裁に入った。 「ちぇ、詠訟(えいしょう)だ。いこうぜ。」 大きな少年は取り巻きを連れて帰っていた。 「ったく、今日もやられたのか。慶(けい)」 「うるさいよー!いいだろ!」 「お前、親父さんから喧嘩を止められてるからって言って、やり返さないってな。  喧嘩売ってんのあいつらなんだからやり返してもいいんだぞ」 「いいよ。我慢できるから。それに何かあればこうやって詠訟が助けてくれるし」 「お前なあ、いつでも俺が助けれるわけじゃないんだぞ。」 慶は微笑んでいる。 「ったく、世話の焼ける弟だ。親父さんが戦場行ってる間は俺が守んねえとな。」 二人は、そのまま帰路へ着いた それを見ているある男がいた。 「あれが、例の子供だ。」 「容易い仕事だな。いつ実行する?」 「今夜だ。準備はいいか?凶閲(きょうえつ)」 「まかせておけ。やつらにも号令をかけておく」 男たちもその場を後にした。 一方戦場では依然と各地で激戦が繰り広げれらているが鄭国の左・中央軍は乱戦のなか、 将を数名討ち取り戦力差を減らしていた。 その中で相変わらず相手の陣営を爆走する「閑騎隊」。 その道をさらに広げようと左右に展開する右軍兵達。その活躍でその日の戦果は鄭国軍が大いに優勢になった その日の夜。今日の快進撃でさらに優勢になった鄭国陣営は明日の更なる功を挙げるため幹部らは天幕にて大いに策を立て来るべき的本陣までの道を皆で語り合った。 兵らは小さくはあるが宴会を開き明日の武功を願い大いにみなで語り合った。 そして、時同じくして獅賀軍陣営では、、、将校らが集められていた。 「みなご苦労。今日は相手に多少功をあげられてはしまったが、私らが予想している範囲の被害ですんだ。皆のお陰だ。」 「おお、鋼丈覇様自らわれわれを労ってくれたぞ。」 「ああ、明日は更なる武功を、、、」 そんななか、梅政需が口を開く。 「そこでだ。皆に報告がある、、、、。この戦。明日で終わる。」 突然の発表に皆が固まる。 (どういうことだ、、、) (戦が終わる?この戦況でか?いくらなんでも無理があるんでは、、、) すると一人の将が口を開く。 「梅政需様。よろしいでしょうか?戦が終わるとはどういうことですか?」 「言葉の通りだ。この戦は明日終わる。今夜、行われる策によってな。」 「策?とは、、?」 「鄭国には今回で戦に復帰した将が一人いる。名は「閑丈」。かつて、鄭国全盛期にて「閑騎隊」と言われ恐れられた騎馬将だ。今回もその軍の功績がことさらでかい。 そこでだ、、、今夜、閑丈の村に刺客を払った。」 「刺客!ですと!!いったい誰を倒すというのですか!それがなぜ戦の決着に。」 「獅賀が誇る暗殺一家・凶族を放ち、閑丈の家族を暗殺する。今日の夜には、奴にその知らせが届くことだろう。ある手紙を添えておいた。やつはこれで手は出せまい。軍を退かなければ家族を殺すと。文を出しておいた。」 「ちょっとお待ちを!それはあまりにも卑怯では!承服しかねます。武人としては恥ずべきことです。」 「私は軍師だ。その武人の固い頭は私には持ち合わせていない。要は勝てばいいのだ。それに鋼丈覇様は了承済みだ。」 「鋼丈覇様!!」 「梅政需が言った通り。了承した。文句があるものはこの場で言え。大将の私の決定だ。 異論があるのであればその場で切り捨てる。」 皆黙っている。 「それに暗殺が失敗したとしても問題ない。要は刺客を送ったという事実を奴に届けばそれでいい。命をとして戦う戦場で戦以外に案じることがあれば士気直結してくるからな。 今日のような、快進撃はやつらにはもうできない。」 この軍議の場で、将校らは大将・鋼丈覇の手段を択ばない考えを知り、驚愕していた。 そして、千遜村。凶族らは作戦を決行しようとしていた。 「凶閲様、配置に着きました。」 「ご苦労。ではみな行くぞ。失敗は許さんぞ。」 「お任せを」凶族らが村に解き放たれた。 千遜村の林地帯に慶がいた。木刀を両手に持って素振りをしている。 (慶、もっと強くだ。そんなんじゃあ、敵は倒せないぞ) (なんで剣技なんかしないといけないのさ) (今のご時世、自分の身を守れないでどうする。それにな、その力はいつかお前の大切な人を守るため役に立つだから今のうちに力をつけるんだ) (わかったよ!父さん) (親父!早く戦から帰って来いよ。それまで、一人でもとにかく鍛錬するんだ!) 慶は日々、閑丈がいなくても稽古を欠かさなかった。 そして、ひと段落して 「今日はこれぐらいにしよう。さて、家に戻るか。」 慶は自宅へ向かう。すると、いつもより様子がおかしい村に気がつく (なんだ?なんか嫌な予感がする) すると、通りの角の道から血が流れてきた。 (!?血?) そこをおそる見てみると村の入り口から死体の山があった。 (なんだこれ?みんな死んでる。) すると横から声がする 「ちょっと、少年。ここに閑丈という将の家族が住んでいるらしいのだが知らないか?」 その声のする方へ振り向くと全身黒づくめの大男が立っていた。 (でけえ!) 「聞いていたか?知らぬか?」 その質問にとっさに自分と答えようとするも思いとどまり慶は答える。 「知らないです。」 「そうか。ならば死んでもらう」 男は襲い掛かる。とっさに木刀で受け止めるが木刀は折れ慶は飛ばされてしまう。 (ぐはあ!なんて強さだ、、、) 「すまないな。少年。この村は今夜亡くなることになっている。村人も皆殺しだ。」 「どうして。」 「決まっているだろう。あの英雄・閑丈の息子だ。こうすれば嫌でも自ら出てくるだろう。そういうことだ。」 (こいつら。俺を探すために村のみんなを殺してるのか。なんてやろうだ。てか、やるしかない) 慶は、いきなり大男の顔面に膝蹴りを入れた。 「がああ、顔が!」 「俺が閑丈の息子だ。俺を探すためにみんなを殺しやがって。許さねえ。」 大男が持っている剣を奪い構える慶。 大男は腰に持っていた剣を持つ 「このクソガキ!てかお前だったか。それは好都合だ。サシで勝負しろ。いまの蹴りの返しだ!」 「いいぜ。来いよ!」 慶は剣を振りかざした。 敵も大きく振りかぶってくる。なんと、慶の力にまけ相手は押されてしまう。 (何!?なんだこいつの力は、、、!この俺が押されてる!?) さらに慶を襲おうとするも目の前に相手はいない (相手がいない!?どこへ) 「ここだよ!」 次の瞬間、慶の刃は相手を貫いた 「な、なぜだっ」敵は倒れた。 慶は自分の予想以上の対応力に自ら驚いて剣を見ている。 (剣というのは、戦争のなかで人が敵を葬るため作られた。一番身近で最強の武器だ。  剣技を身につければたとえ強大な敵が襲い掛かってきたとしても時として自分が上回ることができる。そういうものだ。だから、慶強くなれ!!) 閑丈に言われた助言を思い出し覚悟を決める慶。 (親父。今がその時だよな!今村が襲われてる。俺のせいでだから戦うよ) 「慶!」 振り向くと詠訟が駆けつけた。 「無事か?」 「ああ」 詠訟は慶の前で息絶えている男を見つける。 「お前がやったのか?」 「ああ、いきなり襲ってきた。事情はこいつから聞いた。これは俺と母さんを殺すために  こいつらがやったって」 「ああ。そうだ。でも心配いらない。駐屯中の鄭兵達がお前の母さんを守るために向かってる。」 「なら、行こう。詠訟さん。」 「どこへ?まさか、、、お前も行くのか?」 うなずく慶 「何をバカな事を!お前は今殺されかけたんだぞ!あとは、鄭兵に任せろ。相手は少人数だ。すぐに対処してくれる。」 「親父に言われたんだ。母さんを頼むって。それにどんな敵でも大切な人を守るためにおれはこいつを習ってきた。この辺で倒れている奴らは全部俺らのせいなんだろ。なら、落とし前をつけないと。でも、俺にはまだ完全にその力はない、、、、。だから、力を貸してくれいないか?詠訟さん。頼む。」 頭を下げる慶を見て詠訟は即決した。 「なら、とにかく敵にみつからず最小限に戦うぞ。お前の家まではそお遠くはない。二人なら可能だ」 「詠訟さん。」 「そこまで頼まれて。断るわけないだろ。こんな子供一人に危険な事はさせれん。それに閑丈さんの息子だしな」 「ありがと。」 「よし、行くぞ。離れるなよ」 「うん。」 慶らは自宅へ向かった。 一方、鄭国軍陣営。 「伝令―――!伝令!!」 伝令兵はすぐに閑丈の元へ駆けつける。 「こんな夜遅くにどおした?」 途中、寿俊に会い文を渡す。 「これは!!」 すぐに、閑丈の天幕の元へ。 「閑丈様―――!大変です!」 「寿俊どうした?何があった!」 「これを」 伝令を見る閑丈。 「・・・・千遜村が襲撃。慶たちは無事なのか?」 「伝令の内容しかわからないようです。事前に計画があることを察知して早馬で来させた為、噂かもしれませぬがその噂によるとその行動に参加しているなかに獅賀直属の暗殺部隊の名も」 「獅賀軍だと!」 (この襲撃。獅賀の仕業だというのか!) 「殿!!獅賀軍より内密に文が届きました!!」 李姜はその文を閑丈に渡す。 内容は今夜の襲撃は自分たちでもうすでに家族の命は自分たちの支柱にある。村は皆殺し家族は人質としてもらいうける、というものであった。 「李姜、寿俊。みんなを起こしてくれ。あと、全軍幹部に連絡。」 そして、閑丈は天幕を出ようとする 「殿。どこへ」 「燕備の元だ。お前たちは進撃の準備をしておいてくれ。今夜で戦を終わらす!!」 鬼の形相で支持を出す 「はっ!!」 燕備がいる中央軍天幕。 「何!お前の村が獅賀軍によって襲撃を!!なんて奴らだ」 「奴らは、家族を救ってほしければこの戦でこれ以上何もするなということだ。」 「どうする!閑丈。」 「それでここへ来た。今、李姜・寿俊側近に各兵らを進軍準備を指示させた。後は燕備。 お前の指示があれば今夜、奴らの本陣を急襲して鋼丈覇を討つ。」 「ちょっとまて、確かにここからの距離ならその作戦成功する可能性はある。でも、それをすれば千遜村の者は」 「奴らがその知らせを出させないために迅速な対応が必要だ。だから、いまこの一閃届くこの時だからやれるんだ。全軍で今度は本陣めがけて襲えば勝機はある。」 (本来なら知略も無視した限りなく無謀な戦法だ。3軍中2軍が相手に止められばその場であとの一軍は本陣に孤立し、千遜村の人質も死ぬだろう。 だが、立案者はあの閑丈だ。それに夜襲でこの人数ならいける。俺は、、、閑丈を信じる) 「今すぐ、幹部たちを起こしこのことを伝えろ。迅速な対応が必要だ。おそらく、閑丈らの軍が初めに準備が終わるだろう。準備が終わり次第、すぐに相手の本陣めがけて進軍せよ。 」 「はっ!」 閑丈は自陣に戻ろうと天幕をでようとしたその時、 「閑丈!!成功を祈るぞ。我らも準備が整い次第駆けつける。武運を祈る!!」 閑丈は微笑みその場を後にする 自陣に戻った閑丈は進軍準備を終えた右軍に迎えられた。 「閑丈様。いつでも行けますよ。やってやりましょう」 「殿。この一戦。すべてをかけて戦う所存です。」 「お前達、、、よし!いいかお前達!!今、鄭国内でこの戦による敵の襲撃を受けている村がある。俺の村だ。今、村人は奴らに蹂躙されているかもしれねえ。この文はそのことを使い相手の陣地らか脅迫状として俺らに送られてきた。しかし、奴らは俺たちをまったくわかってない!!これを見てその場で戦を続けれなくしようと精神的に追い詰めようとしたんだろうがそんな物!!この戦場で何の関係もないことだ!この中に千遜村出の者はいない。 俺が住んでいた安住の地だったからな。それに、今から本陣を襲い大将・鋼丈覇を討てば こんな文ただの紙切れになる。相手は俺らを勘違いしている。どんな状況であろうとあきらめず屈強な敵に挑んできた俺らにすればこんな作戦本陣を襲う口実をくれたような物だ。 この一戦速攻で終わらせるぞ。後にも後軍が駆けつける。俺らはこのまま本陣めがけて攻めあがるぞ。いいか!すべてをかけて本陣を落とし、大将・鋼丈覇を討ちとるぞ!!」 「おおおおおおおおーーーーーー!!!!!」 右軍兵ら雄たけび挙げた。 「鄭国軍・右軍。進撃!!」 こうして、閑丈らは相手の非道な手を逆手にとり夜襲を開始した。 怒涛の勢いで侵攻してくる敵国を見つけた獅賀の見張りの兵は大声と挙げる 「敵襲!!敵襲!!その数、、、、な、なんだあれは。急襲などではないこれは、、」 すると、見張り兵めがけて矢が飛んできて額にささる 「こ、これは、戦では、、、ないか、、、」兵はそのまま倒れた。 そして、次々と閑丈らは獅賀軍に攻め入っていく。 「報告―!報告。鋼丈覇様、梅政需様。現在、鄭国が我が陣営に攻め入っております。  おそらく、一軍まるごとが我が本陣めがけて向かっております。」 「なんだと!!」 (どういうことだ?こちらはこやつらの将の家族を人質に取っておるのだぞ。奴らは気でも触れたのか。策を立て対応するのではないのか!いや、そんな場合ではない。夜襲の規模ではなく一軍まるごと攻めてきているのであればこちらは相当後手に回るぞ) 「すぐに伝達経路を使い各拠点に伝令。後手に回ってもいい。奴らを止めろ。将たちにもすぐに対応を促せ!行け!」 「はい!!」 「またしてもやってくれたな。鄭国めが。まさか、逆に攻めに来るとはな。」 「鋼丈覇様。申し訳ありません。これは予想できませんでした。」 「もういい。要は奴らを止めればいいのだ。そして、各軍を分断し孤立させこちらの陣営で嬲り殺せばいい。至極簡単なことになった。あとは小細工なしにつぶすだけだ。」 「は!必ずや」 鋼丈覇は微笑んだ。 一方、獅賀の陣営を爆走中の「閑騎隊」。 「閑丈様。しかし、千遜村の方は大丈夫でしょうか。息子殿と奥方は刺客に襲われているでしょう」 「その心配はいらない。李姜。慶がいるからな」 「息子殿が?でもまだ子供でしょう。」 「いや、あいつには小さい頃から俺直々に稽古をさせてきた。そこらのザコでは相手にならん。」 「なんと!?もう、武の才があるのですか?」 「まさか、まだまだだ。でもあいつならきっとやるさ。俺が出陣するときに約束したんだ。母さんを守れってな」 「その約束だけで。自分を殺しに来る者と戦えますか?無謀ですぞ」 「まあ、見てな。李姜。俺が教えた息子だぞ。大丈夫だ。それより、李姜・寿俊。 お前達に折り入って話がある」 「はっ、お呼びで。」 「もし、この戦で俺が死ぬことがあったら、あいつを慶を守ってやってくれないか?」 「何を!不吉なことを言わないでください。」 「そうですよ。閑丈様。俺らが、あんたが負ける訳ないじゃないですか!」 「だから、もしもの時だよ。もちろん。殺されるつもりはない。でも、確実ではけっしてないからな。頼むぞ。」 「・・・・」 「頼むぞ!」 「は、はい!」二人は一抹の不安を覚えた。 そして、閑丈らは本陣目前へ。 「よし、他の奴らのおかけで本陣までこれた。これから死力をつくして討ち取るぞ。  鋼丈覇を!!」 先頭の軍は、獅賀軍本陣へ突撃を開始した。 千遜村では、慶らは自宅へ向かって疾走していた矢先、新たな刺客にあたっていた (!!なんだこのガキは、この俺が、、、) 血しぶきとともに倒れる刺客。それを見ていた詠訟は驚愕した。 (いつの間にそんな力を身につけたんだ。閑丈様に稽古してもらっていたにしても強すぎるだろ) その刺客を倒した慶の目は、遂に武人の気を放ち始めていた。 「よし、もう家だ。行こう」 「ああ、心配いらないからな慶。大丈夫だ」 「うん。」 慶たちの家の前では駆けつけていた鄭兵がごつい肉体をした男の周りに倒れていた。 「なんと、、、やりがいがないではないか。この程度の守りで俺を敗れるとでも思ったか。」 慶たちはその光景に後ずさりした。その音に反応する男 「やっと来たか。小僧。命をもらいに来た。」 「慶!何してるの逃げなさい!!」 男の後ろから母の声がする。 「母さん!」 その声に反応して男の殺気が慶の母へ行ったその瞬間。男の懐に殺気を感じ男はとっさにその方向に剣で守る。そこにはいつの間にか現れた慶がいた。 (この小僧!いつの間に!) 「させねーよ!クソ野郎!!」 すぐに間合いを取る慶。再び構える。 「ほう、子供にしてはなかなかの素質もっているらしいな。  だからどうした?素質を持っているからと言ってこの凶族の凶閲に敵うわけがなかろうが」 そういうとさらに強い殺気を放つ凶閲 それにあたり寒気と冷や汗がでる慶。 (こいつはやる!殺気だけでこれかよ!本能的に行くべきではないって言ってるけど、  だからって、、、) 「逃げてたまるかよー!」 慶は凶閲に向かっていき、剣を交わす。次の瞬間、凶閲はその変化を感じていた。 (このガキ!わずかだが力が増した!?) 剣で受け止めた力よりさらに力が増していることに気づく凶閲。そしてその後もなお 力はましつづけていく (ふふふ!ははは!いいぞ!小僧!そうだ!そうでなくては!!この凶閲様が出来てきたからにはお前のような殺しがいのある奴が相手でないと燃えないのだ。) 凶閲はその慶を次の瞬間弾き飛ばした。すごい勢いで飛ばされる慶。 「ぐはっ!」 血を吐く慶 「ククク、いいぞ。小僧。俺はお前が好きになったぞ。さすが閑丈の息子だ。  さあ、まだまだ始まったばかりだ。この殺し合い、、、楽しもうではないか」 不気味な笑みをうかべ倒れこむ慶に近づく凶閲。 それを阻止しようと立ちはだかる詠訟。 「させるか!」 「邪魔だ!お前では役不足だ。」 「だまれ!お前なんぞ俺で充分だ」 凶閲に向かう詠訟。 (俺で役不足なのはわかってる。だからといってそのまま大人しくやられるわけにはいかないんだ。慶は守らないといけない) そう思っていると詠訟の身体に刃の感触がした。 刃は詠訟の身体に襲い掛かった。 (なっ!) 「だから、邪魔だと言っている。」 キズから血が噴き出し、倒れる詠訟。 「詠訟――――!」 慶の母は叫んだ。その方向を向いて心もとない声で指示を出す。 「麗様、慶を連れてすぐに逃げてください、、、、早く、、、、、早く!!」 麗は動こうとするも凶閲はすぐに立ちはだかる。 そして、麗の胸倉をつかみ空中につかみ上げる。 「うっっ、慶、、、」 「終いだ!」 「麗様!!」 凶閲が麗を刺そうした瞬間、 「撃てーーーー!」 四方から矢が凶閲を襲う。麗を抱えたままとっさに回避する凶閲。 振り返ると鄭兵の弓兵が現れた。そしてそこから千遜村の村長があられた。 「ここまでじゃ、刺客殿。すぐにその子をはなし退却されなされ。もうじき、ここには兵が 押し寄せてくる。」 「断る」 鄭兵らはすぐ後ろに気配を感じる。そこには凶閲配下の者があられた。 「そういうことだ。老人。この者の命はもらう。」 (迂闊だった。これでは助けれない、、) そして、村長たちの間をくぐり凶閲に向かっていく気配があった。 その気配の先には慶がいた。 「まだ、終わってねーぞ。クソ野郎!!」 麗を持っている腕を狙う慶。それに気がつきとっさに反対の剣で一刀両断しようとする凶閲。 しかし、その瞬間そこにいるはずのない慶はいない。 (!!消えた、、、どこだ!!) 「おりゃーーーー!!」 身体をしならせて剣をよけた慶は凶閲の反対の手をそのまま切り伏せた。 そして、麗は救出する。 その出来事にその場の皆が立ち尽くしていた。 次の瞬間、 「凶閲様!!」 「小僧が、なんてことを!!」 凶閲の手下が叫ぶなか、安全なところへ麗を退避させる 「かあちゃん、とりあえずここにいて。」 「どうするつもり、あんたまさか」 「ああ、目的は俺らだ。そのせいでこんなに町のみんなが死んだ。みんなの仇を討つ。」 「、、、、わかった。死ぬんじゃないよ。慶」 「ああ、ありがと」 そして、ふたたび凶閲のもとへ向かっていく慶 手首がなくなった手をみている凶閲。 「深手を負わさせたのは久方ぶりだ。だが、手を失ったからといって何も問題はない。  この剣を持つ片手のみあれば十分だ!!」 さらにあらゆる限りの殺気をはなつ凶閲。 慶は臆することなく向かっていく。 二人の闘志がぶつかり合う。壮絶な打ち合いがはじまった。 それを見ている村長 (慶、お前が力をつけていることは知っていた。だが、これほどとは!) 凶閲の連撃を受け止める慶。だが次第に刃は慶の身体を傷つけていく。 (押され負け始めた。当然だ。相手は刺客だ。これほど相手できているのが奇跡なくらいだ。  今すぐに助けに行きたいがこいつらが動かさせてくれん) その気を感じた凶閲の配下が話す 「老人よ。すぐにでもあの子供を助けにいきたかろう。当然だ。我が凶族の豪傑の一人・凶閲様は殺し屋である前に凄腕の剣豪だ。獅賀の国でも有数の刺客一族として有名な凶族をこんな子供が敗れる訳ないのだ。やつが死ぬのをそのまま黙ってみていろ。」 息が上がっている傷だらけの慶。さらに向かっていくと凶閲に人蹴りで飛ばされる。 うずくまる慶 「この程度か小僧!!張り合いがないぞ!この俺の片腕を切り伏せたのだろう。もっともっと、この俺を楽しませろ!!」 慶は意識が薄れている。 (こいつ、さすがに強えー、斬られすぎて力が入らない。意識も飛び始めてきた。  どうするかな。このままじゃ、負けてしまう。) そうすると、慶に一つの声が聞こえる (集中しろ!一瞬だ。一太刀浴びせれば真剣の戦いは終わる。気を抜いてるといつの間にか死ぬんだ。それが殺し合い、そして、戦争だ。それが、武人の世界だ。だから、そうならないために稽古を積む。死なないためにな。剣は人を守る武器だ。剣を極めろ。慶!) 慶は戦気を取り戻し倒れた兵の剣を持ち双剣で受け止める。 そして、その力で押し返す。 「っりゃーー!」 凶閲を吹き飛ばす慶。 (何!!) そして、その勢いで連撃に転じる慶。今さっきとは打って変わって慶が有利に転じる。 すこしつづ、慶が今度は凶閲に傷を負わせていく。 (ばかな!!この俺が押されている!!ふざけるな!!) 慶はさらに集中して凶閲の胸に傷を負わす。 「ふじゃけるなーーーーっ!この俺が負けることはないーーーーー!!」 凶閲が目の前の現実に対して叫び慶に向かって大振りの一撃を振りかざした瞬間、 慶は剣は凶閲の腹部を貫いた。 「ぐはああ!!」 倒れる凶閲。勝利した慶は周りを警戒した凶閲を討たれ敵討ちをしようとむかってくる者たちの攻撃を警戒する。しかし、凶閲との激戦で力を使い果たした慶は意識を失いかける。 その瞬間を見逃さまいと凶閲の手下の一人が慶を襲った。 「凶閲様の仇だ。小僧!!」 (しまった!動けない、、、、) 次の瞬間、慶の身体に温かい感触がつつみ赤い液体が噴き出る。 (、、、、、えっ!) そして、自分の身体が血まみれになっているのに気づいてその自分の前には麗が倒れていた。 「母ちゃん!!」 すぐに麗を襲った手下は鄭兵に始末される。 「麗!!大丈夫か!!」 「村長、、、、どうか、慶と夫を頼みます、、、、」 「すぐに医者を呼べ!!早く行くのじゃ!!」 鄭兵は救護兵を呼びに行く。 「慶、、、。慶、、、、よくやったわね。それでこそ。閑丈の息子、、、。私の自慢の息子だわ」 「しゃべったらだめだよ。もういいから。すぐに医者来てくれるから。大丈夫だから」 「私の事はもういいの。今日見てわかったわ。あなたは閑丈様と一緒。もう立派な武人よ。」 「だから、しゃべんなって。絶対助かるから。」 「慶!しっかりしなさい!!」 慶は我を取り戻す。 「あんたがそんなだったら安心して逝けないでしょ。人はいつか死ぬの。それは逃れられない現実。それが早いか遅いかの違いなの。一番、大切なのは決して短命であっても守りたいものを守れたかどうか.私は愛した閑丈様とその息子であるあなたを守れたそれだけで十分。 それに今までも楽しくここで過ごせて幸せだったわ。だから、泣かないで慶。 ああ、閑丈様、、、先に行って待ってますね。ちゃんと、あなたの雄姿は上から見ていますから」 そういうと手を天に掲げ息絶えた。 「母ちゃーーーん!!!」 夜中の千遜村に慶の悲しみの叫びが木霊した。 そして一方、閑丈達は獅賀軍本陣への単独進撃を開始していた。 目視できる先にいる閑騎隊の猛攻をみている鋼丈覇。 (さすが、鄭国伝説の騎馬部隊「閑騎隊」。実力は噂以上か。大陸一の強さを誇る我が獅賀軍の騎馬に前線している、、、だからなんだ!こんな猪突進でここまで届くとでも思っているのか!!バカにするのも度が過ぎている!!その高く伸びた鼻へし折ってやる。) 「番権、碌殷(ろくいん)隊・里丸隊をあそこへぶつけろ!重装兵達を前線にひいて押し返せ!!」 「はっ!!」 閑騎隊1000人、そして配下4000人を総攻撃させて最前線で戦う閑丈達はとにかく死力を尽くして戦かっていた。 「李姜殿、さすがにこの総攻撃は洒落にならなくないですか?」 「黙ってやらぬか。寿俊。殿の決めたことだ。文句をつけるのか?」 「いやいや、そういうわけでは。我が殿はもともと人使い荒いの忘れておりました。」 「だが、それでいつも大きい武功を挙げていたのも事実であろう。あの方ほど、戦場において恐ろしい将はそうはおらん」 「いえてますね。そして、その策を遂行するこの俺たちもね!!」 李姜隊・寿俊隊もさらに猛攻を重ねていく。 閑丈を中心にその戦場一体はさらに熱気を増していく。 そして遂に他の鄭国の燕備軍とその将らも相手の本陣の両横っ腹を包囲そして突撃を開始した。 「閑丈らはすでに中央から進撃した。あとは我らが左右から攻めあがればさらに指揮が下がる。この戦今日で終わらすぞ!!」 「おおおーーーー!」 燕備軍らは指揮を挙げつづける。 それをみて獅賀軍は驚愕した。 「これは、、、、まずいぞ!!この勢いはどうすれば、、」 「どうもできん。」あとずさりする兵に矛の刃がささる 「ぐほォ!」 その後ろにはその矛を持った大男が立っていた。 「全員に次ぐ。突進だ。引いた奴はこの獅賀を汚したとしてこいつみたいに串刺しにしてその親族全員皆殺しな。」 (!!この方は、獅賀の巨人・孫馬雲(そんばうん)将軍。) 孫馬雲将軍は向かってくる燕備軍を確認する。 (何を調子に乗っているか知らないが、俺らを抜こうとおもってるんじゃあないよなあ。  自分の力量ってやつが図れない奴らによくあることだ。この急襲まがいの総攻撃が成功するわけがない。が、攻めてきたからには全力でたたき潰させてもらうぜ。) すると、孫馬雲将軍は全速力で前線に向かいその矛を振り回し燕備兵に襲い掛かった。 その姿をみる燕備兵 (なんだ!この大男は!!)息をのむ燕備兵ら。 その姿を確認する燕備。 (あいつは確か、孫馬雲。やっかいな奴にあたった。しかし、、これでいい。ここにいるということは中央軍はそのまま進撃をさらにすすめることができる。) (まさか、あいつは燕備か。まさか、梅政需殿の読みがここまで当たるとはな。つくづく恐ろしい軍師だ。てことは例の騎馬隊は中央か。ならしまいだ。この侵攻は十中八九その騎馬隊が主攻。そしてその中央軍には‘あいつ’がいるからな。抜けられぬわけがない。  そのまま圧死するがいい鄭軍。) そして、鄭国中央軍にはある一人の将軍が騎馬して戦況を見ていた。 獅賀国将軍・龍晃(りゅうこう)。 (予想以上の突破力だ。5000ぐらいの兵力を横陣で攻めてきたか。総攻撃ならそのまませめてくるのが上策だ。だが、奴らは指揮官を3将にしてその横陣で攻めてきた。そして、  戦力をさげることなく進撃している。それを指揮しているのが「閑騎隊」・隊長、閑丈。 現役のころ何度か戦場で見かけたことがあるが噂以上の実力だ。その配下の者も閑丈とともに鬼人のごとく攻めまくっている。くくく、つくづく、、、俺と一緒だ!!) 「待っていたぞ。この時を!!閑丈!!真っ向勝負だ。我が本営をつく前にこの俺を抜いて見ろ!!」 龍晃は手をあげ叫ぶ 「双龍隊!!攻めあがれ!!鄭の騎馬隊に大陸一の騎馬隊の強さを見せてやれ!!」 「おおおおお!!!!!!」 龍晃周辺の騎馬隊は閑騎軍めがけて総攻撃を仕掛けてきた。 周辺の鄭兵が相手の騎馬隊の攻撃ではじけ飛ぶ。 「!!」 それを確認する閑騎隊3将。 「勝負だー!閑騎隊・隊長閑丈!!この獅賀の双龍隊・龍晃が相手だー!!」 閑丈はかるく微笑んだ。 そして、そのまま進撃速度をあげ双龍隊とぶつかる。 双方、配下の兵が激戦を繰り広げる中、双龍隊の幹部も閑騎隊の3将が相手めがけてすすん でいく。 そして、閑丈が龍晃の前に現れた。 しかし、閑丈は龍晃と刃を交えることなく素通りしてさらに奥へ行く。 「!!」 (今、俺の一撃を交わした。確かにすぐそこにいたのだ。あの距離でどうやって避けた?) すかさず、追おうと反転するとそこに寿俊が立ちはだかる。 「いかせねーよ。敵将さん!!俺が相手してやる!」 「・・・・」 二人はその場で一騎打ちを始めた。 閑丈はそのまま、本営へ到着し周辺の精鋭兵もかたずけていく。 その瞬間をその一帯にいる敵将らは確認するも鄭の各将らが応戦しているため、かけつけ れない。 遂に、閑丈は鋼丈覇の元へ到着した。 静かにたたずむ鋼丈覇。しずかに口を開く。 「まったく、、無謀にもほどがある。そんなでたらめな侵攻。策でもなんでもない!だが、  成功したからには認めてやる。 しかし、、だからといって、それがどうした!!この私を倒さなければ意味などないわ!!」 剣を構え戦闘態勢にはいる鋼丈覇。 「卑劣なことばかりしているお前にだけは言われたくないな。武将たるもの正々堂々と戦うのが道理だろうが。それをわからせてやるよ。援軍として勝利するのが目的だったが俺の家族に手をかけようとしているお前達を絶対許さない。」 その場が二人を中心に静まり返る。 「覚悟!!死ねー。閑丈――――!!」 一振り剣を振る鋼丈覇。 次の瞬間。一閃、彼の身体に刃が走った。 なんと、閑丈は鋼丈覇を一撃で切り伏せたのだ。 一帯の者たちは一瞬何が起きたかわからなかったが次の瞬間、声が聞こえる。 「戦は終わった!!閑騎隊・隊長閑丈が獅賀軍総大将・鋼丈覇を打ち取ったぞ!!!」 その知らせを聞いた戦場の者たちは歓喜の声をあげ、鋼丈覇の配下の者は 肩を落とし嘆いた。 「鋼丈覇様ー!あの方が負けるとは!、、、この戦負けたというのか、、、」 そんななか、落胆に肩を落としていたものが弓を構え何かをねらっていた。 それに気がついた寿俊が関丈に声をかける。 「関丈様!」 時すでに遅し。 放たれた矢は関丈の体を貫いた。 「ぐふっ!」 関丈の口から血を吐き、地に倒れた。 「ははは!気を抜くからだ!戦に勝利しても関丈、お前が死ねば今後の戦で お前たちが勝つことはない!!ここでお前が死ぬことが一番の得策なのだ!! この戦の一番の功労者はこの私、梅政寿様だーー!」 「このーーーー!たわけ者がああぁ!!!」 李姜が叫びながら梅政寿を一刀両断した。 「者ども!!とにかく戦は決した。殿の亡骸を持って鄭国本陣へ帰還する。 右軍、左軍にもすべてを伝えよ。とにかく、戦は終わってもこの乱戦場を 抜けるまでは気を抜くな。これ以上、被害を出すことなく帰還するぞ。」 そういうと、鄭軍中央軍は退却を始めた。 「逃がすな!!鋼丈覇様・梅政寿様の弔いだ!殺せー!!」 獅賀軍は応戦しようとする。だが、ある指揮官がそれを止めに入る。 「皆、やめよ。これよりわが軍も退くぞ。」 「朱蒙(しゅもう)様、なりませぬ。奴らは寡兵でここを攻めてきたのですぞ  今の兵力なら関丈がいない奴らなど」 「黙れ!不毛な戦で無駄に兵を死なす気か!!今からの戦は何の意味も持たぬ  梅将軍の矢で目的は達成された。 奴らはこの戦に勝利しても今後我々に勝てることはない」 しばらく、側近の兵は考え込み、 「全勢力へ伝えよ。全軍、退却!!第1・2将亡き今、全軍の指揮権は獅賀軍    第3将であらせられるこの、朱蒙様に指揮権が渡った。皆、朱蒙様の命令  だ。退くぞ!!」 そして、獅賀軍も全軍退却した。こうして、兵を減らすことなく鄭国が勝利 した。 そのさまを寿俊たち見て再度安堵した。 「奴ら、退いていった。」 「安堵するな。寿俊。きっと、あの将らの他に有能な将がまだいるぞ。」 「え?」 「この戦況において、一番被害が及ばない策をとったということだ。やつら  からすれば殿の命が目的だったのだからな。」 (獅賀にはまだまだ、多くの勇猛な臣下や将がいるということか。  鄭国は、、奴らに対抗できるほどの兵数を果たしてもっているのか?    もっていなのであればまずいことに、、、) 李姜はこの先のことを想像して驚愕していた。 こうして、この戦は幕をとじたのであった。 そして、翌日。 千遜村では慶の母の葬儀が行われそして数日後、関丈の亡骸が慶の前に届き 慶は一度の戦で両親を一気にうしなったのであった。 慶は二人の墓を前で身を震わせ泣き崩れた、、、、
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加