第2章 鮮血のハイブリッド

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「そ、江ノ島。第一支部は数週間に一度、物資調達の為に浮上して、しばらくの間そこで止まっているそうなんですヨ」 「……浮上って、めちゃくちゃ目立つんじゃ──あー、人払いの“(まじな)い”を使ってるのか」 「ご名答〜。第一支部は粒揃いな精鋭(エリート)揃い。“呪い”のレヴェルも潜水艦一つの存在感ぐらい容易く誤魔化せる大規模なモノ、ってワケです」  ミサキのような先天的な吸血鬼──“純血種(シン・ブラッド)”のみが行使できる特殊能力・“呪い”。自らの血液を対価に視力強化や人払いを可能とする標準装備。  “呪い”の効力も固有能力と同様に千差万別。同じ人払いの“呪い”でも有効範囲に大きく差が出たり、身体機能の強化も使う者によって様々である。 「……ふうん」  そして未散のような後天的な吸血鬼──“準血種(セミ・ブラッド)”は、“呪い”を使うことはできない。  決して短くはない吸血鬼の歴史の中で、“準血種”がどうにかして“呪い”を行使できないかという研究はわりと早い段階でされていた。そして早々に“不可能”という結論が出たのであった。 「そんでまあ第一支部が浮上している間に支部長──無明院さんと面会して色々訊いちゃおうってハナシです」 「なるほどね」 「無明院さんは普段超絶多忙なんですが、物資調達中はわりと退屈だそうなので、地上にいる誰かと話しては暇潰ししているそうなんです。まあ例えるなら的確すぎるアドバイスをくれる大人気占い師みたいな? その人気ゆえに面会するのも難しかったりするんですヨ?」 「ふうん」 「あ゛ー! まーたそういう興味無いでーすみたいな反応するー。苦労して面会の予約取ってきたワタシに労いの言葉ぐらいあってもいいんじゃあないですか?」 「ハイハイゴクロウサマ」 「うわーお手本のような虚無だー」  呆れたように言いつつも、ミサキの表情はどこか嬉しそうであった。未散から予想通りの反応が返ってきた安心感で思わず気が緩み、締まりのない表情だ。 「あ、ちなみに面会時間は393秒です」 「……秒単位なんだ」 「いやーこれでも長い方なんですヨ? 分換算で約6分半──訊きたいコト、纏めておかないとネ」  なんだか、有名人にインタビューしにいくみたいだ──と、未散はつまらなそうな表情のままそう思った。 (……無明院書架(第一支部の支部長)か。そういえば──私んとこ(第二支部)の支部長ってどんな奴なんだろ)  ふとそんな事を思う未散であったが、すぐに“どうでもいいか”と切り捨てた。  任務とは無関係で影も形も知らないモノを知りにいくほど今の女子高生は暇ではないのだから。
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