第2章 鮮血のハイブリッド

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 †††  今回の“血答審問”を経て判明したのは、未散が本来は“純血種(シン・ブラッド)”でありながら“準血種(セミ・ブラッド)”としても覚醒したハイブリッド吸血鬼──“混血種(ハイ・ブラッド)”であるという事。そして固有能力・“二丁拳銃”に加えてもう一つの力──手に触れているモノを支配下に置き、使いこなす“掌握”を併せ持っているという事。  “Vamps”第一支部支部長・無明院書架の計らい(というより色々と面倒臭いだけ)で未散の正体は第一級機密事項となったが……。 「あのぉー未散? お腹、空いてません? 何か食べにいきましょっか! スイパラとか!」 「…………」  未散からの返答は無い。聞こえてはいる。ただ返事をする気力が無いだけだ。  錆びた歯車のような思考回路を巡らせる。 (……あれ? 私が元から吸血鬼だったんなら、今までの苦労はなんだったんだろ)  人間に戻る為に必死になって頑張ってきたのに、蓋を開けてみればそもそも元から人間ではなかったなんて。なんとも間抜けで滑稽な話だ。  自分の在り方が奇怪(おか)しくて、可笑しくて、思わず顔が綻んだ。 「──ハ」  そして、亀裂の入った少女の表情からついに瀑布の如き感情が溢れ出す。 「はは、ははは……! あははは! あーっはっは! あははははははははは! 何だソレ? 何だソレ! あははは! あーおっかし……バッカみたい。本当に……馬鹿みたい」 「未散…………?」  あの未散が大声で笑うという現象自体も奇妙なモノだが、その爆笑が“喜”や“楽”から来るものではない乾き切ったモノである事が不気味さを加速させていた。 「……は〜〜〜〜あ」  ここで女子高生は大きな溜息をひとつ。  それは気持ちの切り替え。  朱咲未散に搭載されている合理的かつ機械的な性能。彼女は可能性が1%でもあれば絶対に諦めない泥臭さを持つが、それと同時に可能性がゼロであると理解すれば即座に諦める潔さも併せ持っている。 「……ねえ」 「な、なんです?」 「私が最初(ハナ)から吸血鬼ならさ、ぶっちゃけ今回の任務とかどうでもよくない? 同類殺しの必要も無くなるワケだし、むしろ雑用係として組織の目立たないところで細々と生きたいよ私は」 「なッ、るほどォ……? そう来ましたか……」  既に未散の中でこれからの方針は“人間に戻る為にがんばる”のではなく、“吸血鬼の世界で目立たずに暮らす”というモノに切り替わっていた。  あまりの順応性の高さ・気持ちの切り替えの速度に流石のミサキも顔を引きつらせるが、しかし未散の言い分もごもっともだなと腕組みをしながら難しそうな唸り声を漏らす。 「う〜む、なんかタイトルが変わりそうな展開になってきましたネ……」 「……何の話?」
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