9人が本棚に入れています
本棚に追加
*
とうとうこの日を迎えた。今日は私の16歳の誕生日。最後の舞を終えた私は宴会を抜け出し領主の屋敷の前に来ていた。
「今ごろ騒ぎになっているわね」
でもこれだけは譲れない。後でどんな罰を受けようとも構わない。
私は塀の向こうの屋敷を見上げる。
この町最後の大舞台に人が集まっている今なら、ここには誰もいない筈。領主もその息子も……そう、アレン以外は。
私は月明かりだけを頼りに、木をよじ登り塀を乗り越えた。
そして探す。西の棟の灯りの付いた部屋を。ユアンが教えてくれた……そこがアレンのいる場所だと。
「――いた」
棟の三階、オレンジ色の光が漏れる格子窓の一つの影。それは間違いなく、アレンのシルエット。
その部屋の位置を確認し、私は走り出した。
鍵の開いた窓を探し中に忍び込む。階段を一気に駆け上がった。アレンの部屋はもうすぐそこだ。
扉の前に立つ。ドアの下から漏れ出る光がやけに眩しい。
ドアノブにかけた手が緊張で震えた。足先が冷たい。でも私は決めたのだ。アレンに気持ちを伝えると。
だから。
最初のコメントを投稿しよう!