愛しのアレン(ShortVersion)

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*  とうとうこの日を迎えた。今日は私の16歳の誕生日。最後の舞を終えた私は宴会を抜け出し領主の屋敷の前に来ていた。 「今ごろ騒ぎになっているわね」  でもこれだけは譲れない。後でどんな罰を受けようとも構わない。  私は塀の向こうの屋敷を見上げる。  この町最後の大舞台に人が集まっている今なら、ここには誰もいない筈。領主もその息子も……そう、アレン以外は。  私は月明かりだけを頼りに、木をよじ登り塀を乗り越えた。  そして探す。西の棟の灯りの付いた部屋を。ユアンが教えてくれた……そこがアレンのいる場所だと。 「――いた」  棟の三階、オレンジ色の光が漏れる格子窓の一つの影。それは間違いなく、アレンのシルエット。  その部屋の位置を確認し、私は走り出した。  鍵の開いた窓を探し中に忍び込む。階段を一気に駆け上がった。アレンの部屋はもうすぐそこだ。  扉の前に立つ。ドアの下から漏れ出る光がやけに眩しい。  ドアノブにかけた手が緊張で震えた。足先が冷たい。でも私は決めたのだ。アレンに気持ちを伝えると。  だから。
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