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彼と出会ったのは2週間が過ぎた頃。それは私が小さな石橋の上から、氷の張った川を眺めていたときだった。
「君、いつも真ん中で踊ってる子だろう?」
「――え?」
突然後ろからかけられた声に振り向けば、そこには私と同じくらいの歳の男の子が立っていた。
「どう? ここにはもう慣れた?」
「……え、ええ」
帽子から覗く太陽の色に輝く金の髪。それと同じ色の、今にも吸い込まれそうな大きな瞳。そして、溢れんばかりのキラキラした笑顔。
その全てに、心を引かれた。
「君、時間ある? もし良ければ僕に町を案内させてくれないかな? どう?」
紺色のコートとマフラーを装った彼は、寒さからか鼻先を赤くして、それでもにっこり笑って右手を差し出してくる。その屈託のない笑顔に、私は気付けば頷いていた。
「やった! ねぇ君、名前は? 僕はアレン。アレンって呼んでよ」
そう言って更に笑みを深くする彼――アレンに、私の頬も思わず緩む。
「エラよ、アレン」
「エラ、……エラ。とても素敵な名前だね。じゃあさっそく行こう、エラ。行きたい場所があれば言ってね、どこへでも連れて行ってあげるよ」
彼はそう言って私の左手を取ると、軽い足取りで歩き出した。
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