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年が明けた。
私の成人まで残り1ヶ月。私はあの日から一度もアレンに会えていない。
私はアレンに嫌われた。
そうとしか考えられなくて、私は父様に言われた通り彼を忘れようとした。でもどうしても出来なくて、私はとうとう自覚した。
私は彼が好きなのだと。いつの間にか好きになっていたのだと。
それがわかった途端もっと辛くなって、私は夜になると窓の外に浮かぶ月を見上げ、彼の切なげな笑顔を思い出しては泣いていた。
アレンの言い付けを守っていれば……せめてあのとき彼に何か言葉をかけられていれば、こんなことにはならなかったのだろうか、と。
毎日毎日考えて、でも答えなんて出る筈もなくて。
「……アレン」
会いたい、アレンに会いたい。
もう一度あの笑顔を見たい。もっと沢山話をしたい。
彼の好きなこと、好きな場所、どんな風に育って、どんな夢があるのか。私は、まだ何も知らないのだ。
私は声を殺して泣いた。隣に眠る母様を起こさないように。
けれど。
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