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くびかりさん。
いつの時代でも、小学生の女の子が好きなものがある。
恋、おまじない、怪談――その類が流行るのは、きっと今も昔もそう変わらない。実際私もそのうちの一つ、怪談にドハマりしている一人なのだから、おおよそ間違ってはいないのだろう。
怖い話は好きだ。異世界やファンタジーにドキドキする気持ちにも似ているが、怪談はそれらと比べてもっと身近なところに存在している。どこにあるかもわからない遠い世界のことではなく、ほんの身近な――それこそ学校へ行く道帰る道、その裏側にひっそりと存在していているかもしれない怪異。もしかしたら、退屈な日常のほんのちょっとした刺激になってくれるかもしれない、そういう存在。面白い、と思うことは何も罪なことではないだろう。
まあ、それが現実の事件を元にしているともなると、少々不謹慎にはなってくるわけだが。
「聞いた?今度は東北の方に出たんだってさー。岩手とかそのへん」
昼休みの時間に、クラスメートの巴が言い出した。その言葉をきっかけに、いつもの雑談の花が咲く。私も他のみんなと一緒に、自称・情報通の彼女の元に集まる。彼女はネットでもテレビでも、ニュースを真剣に見る(というわりに、持ってくる情報は微妙に尻切れトンボだったりするわけだが)らしく、面白いネタを仕入れてはみんなに提供してくれる達人だった。特に、都市伝説や怪談には非常に詳しい。“くびかりさん”も元はその一つだった。
「くびかりさんってさ」
私は携帯をいじりながら話に加わる。
「生きてる人の首を一瞬で切り落として持ってっちゃうんでしょ?大鎌を持ってるってあたり、死神とか、テケテケとかカマイタチ?そのへんに似てそうなんだけどなんか違うのかな」
「違う違うって。死神は一応神ってついてるし、神様の類なんじゃん?でもってテケテケとかカマイタチっていうのは妖怪でしょ。カマイタチに至っては科学現象って話もあるらしいし。くびかりさんは悪霊の類だから!」
いつも通り胸を張ってドヤ顔をする巴。やや偉そうだが、彼女の講釈は嫌いじゃない。ひとつの意見として聞くにしても、面白ければなんでもいい集団には関係ないのだ。それこそ、真実であるかどうかはまるで関係ないとも言える。
自分達に降りかかる気配もないなら、どんなに恐ろしい事件も怪談もネタにしかならないのだ。そういう話をするとすぐ、大人は渋い顔をしてお説教をしてくるものだけど。
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