くびかりさん。

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「くびかりさんっていうのは、北海道かどっか?で強盗にあって死んだ女の人の幽霊なんだって。犯人はその女の人の元カレで、ストーカーになったキモい男らしいんだけど。いくら言い寄ってもヨリを戻してくれないし、お金も工面してくれない女の人にキレて滅茶苦茶に刺しまくって殺しちゃったってやつらしいんだよね。で、キモ男は女の人のお金を奪って、首を切り落として自分の秘密の隠れ家に持ってったんだと」 「その隠れ家ってのが、絶対に普通の人には見つからない場所なんだっけ?」 「そうそう。今でも見つかってないの。キモ男は殺しておいて、その女の人への恋愛感情が忘れられなかったらしくて。切り落とした首を持ち去って、秘密の隠れ家にホルマリン漬けにして保管しちゃったんだってー。殺された女の人はそれが悔しくて悔しくて成仏できなくて……で、最終的には悪霊になっちゃって、首を捜してさ迷っている、と」  都市伝説として語られているが、多方似たような事件が発生した時に、ネット掲示板か何かに書き込まれた作り話であるのだろう。ネットにはいまだ、事実か嘘かわからない話はごまんと溢れている。一時期より怪談系の大型掲示板も相当過疎ったらしいが、それでも面白い話を求めてさまよう輩はあとを絶たないのだ――私も含めて。 「ホルマリンって、普通の人がそんな簡単に手に入れられるもんなの?理科室とかで標本を保存するのに使われてますってお約束だけど」  私はついつい余計なツッコミを入れてしまう。 「それに、首ってそんないつまでも隠しておけるもんなのかなあ。それ、何十年も前に起きた事件ってことになってるでしょ。警察ってそんな無能?なんか設定ガバいよね?」 「言いたいことは分かるけど、そういうツッコミは野暮でしょ霧菜(きりな)ちゃん!」  もー!と牛のような鳴き声を上げて私の顔面にずびっ!と指をつきつける巴。彼女の動作はいちいち芝居がかっている。それが愉快といえば愉快だけども。
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