くびかりさん。

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 ***  ついつい友人達とお喋りに興じてしまい、気がつけば時間は五時近くになってしまっていた。教室に先生が見回りに来て“早く帰れ”と急かされるまで時間を忘れていたのだから、我ながら女子という集団は恐ろしいと思う。某猫型ロボットが持っていそうな、時間を止める時計でも装備しているのではなかろうか。いや、実際止まっているわけではないのだけれど、感覚の問題だ。  数人は塾に遅刻すると言って、それはもう体育の授業よろしく超特急で走って帰っていた。よくよく考えれば私達は六年生、私立の受験を控えた子達は遊んでいる暇などない時期なはずである。それこそ小学校に入ってすぐから塾に行って勉強漬けになっている子もいるくらいなご時世だ。だからこそ息抜きもかねて、おしゃべりの時間を増やしたくもなるのかもしれない。――元より、本当に行きたくて私立を受験する子ばかりではないのだから。  私はといえば、その点は気楽なものである。せっかく近いところに公立中があるのに、何が悲しくて遠方の私立を受けなければいけないのか理解に苦しむ。受験なんて面倒なもの、中学生になってから頑張ればいいのだ。小学生から無理に苦しむ意味なんてないはずである――なんて、成績優秀な優等生、で通っている私がこんなことを考えているなんて言ったら先生にもひっくり返られそうだけれど。本気で頑張っている子達に対して、こんな物言いをするほど野暮なつもりもないけれど。 ――そういえば、五時くらいなんだっけ……逢魔が時って。  ああ、どうして。人気のない住宅地を通っている時に限って、こういうことを思い出してしまうのか。 ――くびかりさん、に殺された人は。夕方に殺されてることが多いとかそんなこと言われてたような。……うえ、最悪。  馬鹿げている。本当にそんな悪霊なんかいるわけがない。そうは思うが――実際、複数人の男女の首を切り落としている猟奇殺人事件の犯人が、未だ捕まっていないのは事実である。それをいいことに、この都市伝説がまるで真実であるかのように全国に広がりを見せていることも。
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