くびかりさん。

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――くびかりさん、が北に集中してたのは……偶然?それとも、私がこの話を聞いたから? 『そうそう。首を返す、に同意したら首を刈られて殺されちゃうから。その“さもなくば”の方を提案しないといけわないわけ。もし死にたくなかったら、ある言葉を言わないといけない。つまり……』 ――なんで、私が?どうして、よりによって私? 『“首は差し出せないので、代わりに私の足をお持ち返りください。”くびかりさんは生前、綺麗な足にも拘りがあったから……足なら満足してもらえるんだってさー』 ――無理だよ。言えるわけないよ。だって……!  くびかりさんは、生きたまま両足を切り落として持っていく。首を刈られるよりは生存する可能性があるだろう、でも。  もう二度と走れなくなる。  そして凄まじく、痛い。転んだ時よりもずっと。死んでしまった方がマシかと思えるほどに。 「い、いや……」  選べない二択を前に。張り裂けそうな心臓が限界に達し、呪縛を強引に切り裂いた。  私は逃げようとして転び、尻餅をつき、ずるずると後ずさりしながら、ただ。 「いや、いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」  救われるための、たった一つの言葉は。  ついぞ、私の唇をこじ開けることはーーなかった。
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