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無事に戻った?
遠くで何かの音が聞こえて、名前を呼ばれたような気がした。
「・・・ウラノさん、ウラノさーん。」
ピンポン、ピンポーン
はっと気が付くと自分の部屋だった。
「お荷物ですー、ウラノさんー。」
「あ、はーい。」
半分、まだ頭がぼーっとしてしていたけどドアを開けて荷物を受け取った。
「ここにハンコを。はい、どーもー」
さっさと帰っていく宅配便の人は、見慣れた姿のいつもの人だった。特に変わったところもなく。あれ、なんでそんなことを私は気にしているんだろう?
荷物を開けると中に入っていたのは、ネットで注文した「アリスとチェシャ猫」のマグカップ。お湯を入れるとチェシャ猫の姿が現れて、冷めてくると段々見えなくなってしまうというやつ。最後まで「にやにや笑い」は残っている仕様というのが気に入って買ったもの。
さっそくお茶をいれて、本当かどうか試してみよう。
そう思ってポットから急須にお湯を注ぐときに、自分の腕にきれいなリボンがまいてあるのに気が付いた。
あれ?なんだろう、このリボン・・・。でもきれいだし、とっておこうかな。何かのお礼にもらったような気がするけど、誰だっけ、このリボンをくれたのは。思い出せそうで思い出せない。なにか、遠くに行って帰ってきたような気もする。
いやいや、今日はどこも行ってないはず。この荷物を受け取るのを楽しみにしていたんだもん。でも、なんだか疲れたなあ。このカップでお茶を飲んだら、ちょっと横になるかな。
そう思いながらカップを手に取ったときに、カップに描かれたアリスがいたずらっぽくウインクしたように見えたのは、きっと気のせい。
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