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カメに乗って
テーブルのそばにある椅子の背につかまって、思いっきり足を延ばしてカメを蹴飛ばした・・・つもりだった。
触りたくない、という意識が強すぎてカメに届いたのはほんの足先。ちょんと当たったくらい。ただ、そのあたり方がよかったのか悪かったのか、カメはくるくると回転をし始めた。さっきまでのバタバタとヒレを動かしていたのとはちがって、甲羅にいつのまにか手足は入っているようだった。回転が速すぎて見えないだけ?
そして回転がどんどん速くなるにつれて、甲羅はだんだんと立ち上がって、気が付くとカメはマトモな姿勢になって、こっちを見ていた。
「ウラシマさんっ、助けてくれてどうもありがとうございますっっ。お礼に・・・」
「助けてないっっ、助けてませんっっ。お礼はいいからっっ。帰って。カメに連れられて竜宮城に行きたくないからっっ。」
「まーまー、そう遠慮しなくても。」
「遠慮してませんからっ。お願い、恩返しもお礼もいらないからっ。」
「とにかく助けてもらった以上、お礼をしないといけないんです。そう決まっているんです。拒否権はありません。」
「断固拒否しますっっ。」
「さあそれじゃあ、いきますよー。」
「ちょ、いやだって言ってるのにっっ。」
「シートベルトをお締めください。」
カチッと何かがはまる音を聞いたような気がしたけど、そのあとは覚えてない。うん、だってこれって夢だもんね。うん、夢だよ絶対・・・。
手のひらサイズのカメに乗れるわけがないのに、いつの間にか乗ってるのも夢だからだ。不思議の国のアリスだって、大きくなったり小さくなったりするのに、何か飲んだり食べたりしてるのに私は、なんか食べてもいなけりゃ飲んでもいない。ただ、宅配便の箱から飛び出てきたカメを蹴飛ばしただけ。
なんでこんなことになっちゃったんだろう・・・
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