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アリスと一緒に
「わかった。それじゃあ、あの玉手箱って『ウラシマ』にあげるものなんだよね?」
「そういえなくはないですけど・・・。」
「じゃあ、カメを助けた私にもらう権利はあるわけだ。」
「お望みでしたら、ウラノシマコさんに差し上げます。しかし・・・。」
「だったら、私に頂戴。」
「でも、アリスさんが持ってます。」
「いいの。私にあげたことにして。」
なんだか飲み込めない顔をするイケメンのオト様。そういう顔も悪くないけど、とにかく私は元の世界に帰りたい。いくらオト様がイケメンでも、ここでずっと暮らす気はないし。
しぶしぶ、わからないままにオト様が承知する。
「わかりました。あの玉手箱はウラノシマコさんに差し上げます。しかし開けてはいけませんよ。」
「わかってるって。開けたりしないし。」
だいたい手に触れるつもりもない。
「それで?」
「アリスちゃん、その箱は、あなたにあげるわ。」
「えええっ、ウラノシマコさん。」
驚くオト様をしり目にアリスはしれっと答える。
「あら、どうもありがと。」
「はい、これで問題は解決ね。オト様。私、もとのところに帰りたいんだけど。もちろん300年後なんて嫌だからね。私のところにカメが現れてこっちに来ることになったすぐあとくらいに帰して。できないとは言わせないわよ。あ、もちろん年を取るのもナシ。わかってる?」
「そ、そんな難しいこと・・・。」
「大丈夫よ、おねえさん。私とくればいいわ。そうすれば、おねえさんがお望みの時間に帰れるから。」
「アリスちゃん、ホント?」
「ええ、私は嘘はつかないわ。」
「じゃあ一緒にいく。」
だいたいアリス大好き人間だから、こんなチャンスを逃す気はさらさらない。イケメンのオト様よりアリスのほうがいいっていう私って、ちょっと変?だって私の名前でずいぶん「ウラシマ」「竜宮」「乙姫」でからかわれてきたんだから仕方ない。
日本の昔話っていうだけでアレルギーになりそうな私が、よくここまで我慢したもんだわ。次はイギリスの大好きなファンタジーだから、ルンルン。ああ、アリスちゃんと二人なら、どこでも行っちゃう。
「じゃあね、みなさん。」
そういうとアリスちゃんは私の手をつかんで呪文のような言葉を唱えだした。
「トゥインクル・トゥインクル・リトル・パイ。」
あれ、これって不思議の国の中で出てきたやつと違うけど・・・
と思ってアリスちゃんのほうを見下ろした瞬間、ふわっと浮くような感覚があった気がする。アリスちゃんとつないだ手の感覚はあるけど、風がすごくて目があけれない。まるで洗濯機の中でぐるぐるしたら、こんな感じじゃないか、なんてのんきに思っていられるわけもなく悲鳴を上げていた。
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