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「これ、私の手作りなんだ」
外は雪が降っていて、今はクリスマスで、彼女は恋人で。
渡されたのは、彼女の愛情たっぷりの手作りマフラー。
正直、重い。
それが、そのマフラーを手に持った感想だった。
なんでこんなものを、と思う。
「ね、つけてみてよ」
あほか。
ノリノリな彼女を前に、その言葉が口から出るのを必死で止める。
こんなマフラー付けれるわけがない。
表面はボコボコだし、形は歪、手作りだと一目でわかる。
はっきり言って通報されるレベルだ。
こんなの付けて外に出れば、最悪死人が出るレベルだ。
「わたしね。この日のために頑張ったんだよ」
それは分かる。すごく分かる。
ただ、何故そんなことを頑張ってしまったのか。
それが、分からない。
店売りの物なら、喜んでつける。
だけど、手作りはアウトだ。
仮にどんなにきれいに作られていたとしても、つけて外に出るなんてありえない。
それに、こんな冬の寒い時期にマフラーなんて渡されても困る。
こんな時期にマフラーを付けるなんて、手はかじかむし、体も冷える。
風邪をひきかねない。
なによりも、外は雪が降っている。
朝には、除雪車が通り、道路の雪はなくなっているだろう。
けれど、道には大量にまかれた融雪剤が残っている。
彼女が頑張って作ってくれたマフラーがボロボロになるのを見るのは、忍びない。
「これは、飾っておくことにしようか」
「え~~~~~~~~~」
不満の声を上げる彼女には、道路交通法について教えなければならないだろう。
ガレージに運びこむべく、彼女の手作りのマフラーを傷つけないように、抱え直す。
本当重い。
よくも車用マフラーなんて手作りしたものだ。
あきれると共に、彼女の愛の重さににやけが止まらない僕だった。
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