一卵性の僕

8/11

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
 「僕最近たまにすごい罪悪感を感じるんだ。本当は兄さんが歩む道だったのに、今歩いてるのは俺だ」  月流は泣きそうな顔をして俺に言った。  「もし俺がやっていたら、ここまで人気者にならなかった。これは月流がやったからできたことなんだ、だから気にするな。月流のやりたいようにやってくれ、罪悪感なんてもたなくていい。俺はお前に感謝してるんだからな。」  「ありがとう」  俺がそういうと、月流は抑えていた涙を一気に流した。そしてしばらく泣いた後、涙を手で拭き取り今度は自信に満ち溢れた顔で言った。  「任せて兄さん、『太陽』の名をもっと有名にしてみせるから!」  「あぁ、頑張れ!」  「じゃあ、明日も仕事だからお休み!」  「お休み」  月流が俺の部屋から出ていくと、一気に静かになった。  その中で聞こえてくる自分の鼻息はとても静かだった、しかしその鼻息も徐々に荒くなっていく。  「嘘つきが」  僕はそれまで抑えていた苛立ちを顔に出した。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加