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数ヶ月前、新曲のレコーディングに二人で行った時こと。俺がレコーディングをしている間、月流はその場にいたプロデューサーと話していた。
歌い終わった後月流達のもとへ向かうと、どうやら自分のことを話しているのがわかった。
「なるほど、弟の月流さんが歌っているんですか」
「はい、月流はメディアの前に出るのが嫌なそうで、僕達は顔も声も似ていたので僕が歌っているようにしているですよ」
「なるほどそうなんですか、色々と大変そうですね」
「いえ、そんなことはありませんよ。月流が頑張って歌ってくれているんですから」
その言葉を隠れて聞いていた俺は少し嬉しかった。
その言葉までは。
「でも実際色んな人とのコネも作れたし、美人の女優さんや歌手の人とも知り合えて、本当使える道具だなと思いますよ」
「それは少し酷すぎませんか?」
「いいんですよ、あいつは道具なんです。喋る道具」
その言葉を聞いた途端、血の気が一気に引いた。
聞き間違いか、そんなことも思ったが、その後も聞くに足りない僕に対する罵詈雑言が続いた。
とても悲しかった。弟が自分のことをあんな風に思っているなんて。
あの時の月流の顔をいまだに忘れ慣れない。
とても悲しい。だがそれ以上にとてつもない怒りが体の中から込み上げて来た。
確かに押し付けたのが俺だが、月流の俺に対する気持ち、俺の存在、俺のやって来たことが全て否定され馬鹿にされている様に感じた。
いや、実際そうだ。あの時の月流の表情と言葉がそれを物語っている。
その時から俺は月流に対し、復讐心が芽生えた。
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