第三章 視えない能力

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 義顕がみんなを視れない以上、喜一さんや義顕にみんなの発言を伝えるのは私だけであって。そりゃあもう、とても疲れた話し合いではあったけど。  でもみんな、衰弱した義顕を心配してくれて協力してくれると言うし。九郎は祓い屋を懲らしめる気、満々だし。  で。結局、まとまった話は。  義顕の体調がこれ以上悪くならないように、しばらく学校は休ませることに。学校に顔を出さない義顕を心配して── いや、もしかしたら獲物を逃さないようにと、瑞季ちゃんは義顕にコンタクトを取って来るはず。  そこで義顕は、だいぶ良くなって来たからちょっとなら外出できるよ。ウチの水天宮で会わない?と、彼女を(おび)き出す。  あとは九郎に任せる。って感じ。  そして徳子(トッコ)ちゃん達は消えて行き、喜一さんは事務作業へと戻って行った。私は義顕が心配だからとお義母(かあ)様の許可をもらって、義顕を連れて帰宅。  その途中で、義顕はこんなことを話し始めた。 「なんか…… パパとママと九郎さん、徳子さんやばばや達とのやり取りを聞いていたら。  パパとママって本当にあの時代の人達と知り合いで、それどころか仲がいいのがわかったよ。  みんなが俺のことを心配してくれるのって、パパとママがいてこそなんだろうな、って。パパとママって、本当にすごい人達なんだね。  瑞季ちゃんとの関係が壊れちゃうのは残念だけど、みんなが決めたことなら、俺はそれに従うよ──」  そうよ、義顕。私達とみんな── 特に九郎とは強い絆で結ばれているの。800年の時を越えてもね。  こんなことを話されても── まあ、実際に政子ちゃんが乗り移っていた女の子の母親みたいに、信じないと納得できないケースもあるかも知れないけど。  普通の人だったら、そんなSFみたいなファンタジーみたいな話をされても。って、誰も信じないでしょうけどね。  私達は間違いなく、あの時代を生きたのよ。
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