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「義顕ぃー!」
小走りで手を振りながら、桜の樹の下にいる義顕に近付いて行く女の子。どうやら瑞季ちゃんに間違いなさそうだ。
義顕めー、あんなに可愛い女の子と放課後、一緒に部活動しているなんて。なんて羨ましい!
「大丈夫なの?」
「ああ。もうだいぶ。こうして外にも出られるし。ゴメンね、長い間休んじゃって」
「ううん…… 私一人だったら、部活も行かないし。でも良かった。思ったより元気そうで」
ちょっと距離はあるものの、二人の会話は筒抜け。
そして、すぐ近くに九郎がいると言うのに、瑞季ちゃんはちっとも気にしていない素振り。どうやら視えてはいないようだ。
「瑞季ちゃん…… 気を悪くしないで聞いてね」
お。どうやら早速、義顕のヤツが話の核心に切り込むみたいだ。彼女が頷くのを待って、深呼吸をしてから義顕は続ける。
「瑞季ちゃんは、神職の息子だって知ってて俺に近付いたの?それって、祓い屋をやってる黒谷家と、何か関係があるの?」
完全に動揺してる。遠くからでも瑞季ちゃんの様子がおかしくなったのがわかるもの。急にまわりをキョロキョロしだして、落ち着かない感じ。
「な、何を言ってるの?義顕。そんなワケないじゃない」
「そう?だってウチの父親も母親も、まわりの親しいみんなも、俺の具合が悪くなったのは祓い屋に『何か』を吸い取られているからだ。って言うよ」
「チェッ…… バレたら仕方がない……」
瑞季ちゃんが義顕と距離を取り、右腕を義顕の顔の前に差し出そうとする──
その直前、義顕の身体がビクッと痙攣したかと思うと、急に動きが機敏になって差し出された瑞季ちゃんの腕を掴む。
「よ…… 義顕?」
その行動に、瑞季ちゃんもうろたえているようだ。
「おい、祓い屋の娘。これ以上義顕から、何を奪おうと言うのだ」
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