第三章 視えない能力

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「義顕ぃー!」  小走りで手を振りながら、桜の樹の下にいる義顕に近付いて行く女の子。どうやら瑞季ちゃんに間違いなさそうだ。  義顕めー、あんなに可愛い女の子と放課後、一緒に部活動しているなんて。なんて羨ましい! 「大丈夫なの?」 「ああ。もうだいぶ。こうして外にも出られるし。ゴメンね、長い間休んじゃって」 「ううん…… 私一人だったら、部活も行かないし。でも良かった。思ったより元気そうで」  ちょっと距離はあるものの、二人の会話は筒抜け。  そして、すぐ近くに九郎がいると言うのに、瑞季ちゃんはちっとも気にしていない素振り。どうやら視えてはいないようだ。 「瑞季ちゃん…… 気を悪くしないで聞いてね」  お。どうやら早速、義顕のヤツが話の核心に切り込むみたいだ。彼女が頷くのを待って、深呼吸をしてから義顕は続ける。 「瑞季ちゃんは、神職の息子だって知ってて俺に近付いたの?それって、祓い屋をやってる黒谷家と、何か関係があるの?」  完全に動揺してる。遠くからでも瑞季ちゃんの様子がおかしくなったのがわかるもの。急にまわりをキョロキョロしだして、落ち着かない感じ。 「な、何を言ってるの?義顕。そんなワケないじゃない」 「そう?だってウチの父親も母親も、まわりの親しいみんなも、俺の具合が悪くなったのは祓い屋に『何か』を吸い取られているからだ。って言うよ」 「チェッ…… バレたら仕方がない……」  瑞季ちゃんが義顕と距離を取り、右腕を義顕の顔の前に差し出そうとする──  その直前、義顕の身体(からだ)がビクッと痙攣したかと思うと、急に動きが機敏になって差し出された瑞季ちゃんの腕を掴む。 「よ…… 義顕?」  その行動に、瑞季ちゃんもうろたえているようだ。 「おい、祓い屋の娘。これ以上義顕から、何を奪おうと言うのだ」
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