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あれ?その声、その喋り方。もしかして九郎?ひょっとしてまた、義顕の身体に乗り移って現れたの?
「くっ…… 離せ!お前、義顕じゃないな。いったい何者!」
「貴様に名乗る名などない。大人しく観念しろ!」
瑞季ちゃんの右腕を抑えたまま。今度は九郎がもう片方の手を瑞季ちゃんの額の前に置く。まさに形勢逆転。
「お!どうやらクライマックスのようだね」
その様子に見入ってしまっていた私は、背中が隙だらけだったのだろう。両肩を喜一さんに掴まれて、思わず大声をあげそうになる。
すると次の瞬間。義顕と瑞季ちゃんは気を失い、その場に倒れてしまった。
「喜一さん!」
私は叫びながら、喜一さんの手を引っ張って走り出していた。
「義顕!おい、義顕!」
「瑞季ちゃん、大丈夫?」
私が瑞季ちゃんを。喜一さんが義顕を抱きかかえて、揺すぶったり軽く頬を叩いたりしてみる。
やがて先に気が付いたのは瑞季ちゃんのほう。
「巫女…… さん?」
「ええ、そうよ。私は義顕の母親。大丈夫?瑞季ちゃん」
敵の手中で介抱されているのが屈辱だったのか、瑞季ちゃんは複雑な表情を浮かべるけど、まだ身体が思うように動かないのだろう。諦めたようにそっと目を閉じる。
やがて喜一さんの腕の中の義顕も「う~ん」と唸り声をあげる。
「あれ?喜三太?どこだ?ここは」
へ?
目を開けた義顕が、おかしなことを呟いた。自分の父親を昔の名前で呼ぶか?ふつー。私は腕に瑞季ちゃんを抱いたまま、呆気に取られてしまう。
見れば義顕の身体から抜け出した九郎が、あちゃ~、やっちまったな…… みたいな顔をして頬を掻いているじゃないか。
「おお、橘似。これは夢か?俺って船の上からの流れ矢に射抜かれて、死んだんじゃなかったのか?」
私のほうを見て、義顕が言う。
流れ矢に射抜かれて死んだ?そう言えば、義顕にはある野郎の魂が宿っているって、九郎が言ってたっけ。
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