第三章 視えない能力

15/21
前へ
/120ページ
次へ
 祈祷の予約がないので、いつもの袴姿ではなくジーンズに長袖Tシャツ姿の喜一さん、学校を休んでいるので喜一さんと同じようなスタイルの義顕。  そして仕事中だから巫女服姿の私と、高校の制服を着た瑞季ちゃんの4人で社務所の奥の部屋に入る。  その部屋は、他の神社の神職のかたがいらっしゃった時に通したり、お偉いさんが祈祷にいらっしゃった時に控室に使ってもらうような、いわばVIP応接室。  私達家族以外はあまり近付かない場所なので、内緒話には持って来い。  テーブルの向こう側に瑞季ちゃんと義顕。向かい合うように私と喜一さんが座る。  部屋にあるポットでお茶を淹れていると、しおらしく小さくなって正座をしている瑞季ちゃんが口を開く。 「息子さんに危害を加えた私を、どうしてここまで良くしてくださるんですか?」  その言葉に、私はクスッと笑ってしまった。喜一さんを見ると、彼もなんだかニヤケている。 「そうねぇ…… その前に、瑞季ちゃんは義顕のお友達だから。義顕がこんなに可愛らしい女の子と仲良しだったなんて…… あんたのお茶にだけ、毒を入れておくね」 「…… 俺かよ」 「大丈夫?瑞季ちゃん。具合が良くないとか、痛いところとかない?ウチの── この水天宮の陰の住人がずいぶんと乱暴をしちゃったみたいだけど」 「ええ…… 大丈夫です。ありがとうございます」 「こちらこそ。一緒の部活で、義顕と仲良くしてくれているのでしょう?いつもありがとう。義顕は、瑞季ちゃんに失礼な振る舞いをしていない?」  義顕は「ひどいなぁ……」と言いながら、恥ずかしそうに頭を掻いているけど。隣の瑞季ちゃんはそんな義顕をチラッと見てから、何かを決意したように背筋を伸ばす。 「ありがとうございます、お母様。私、全てをお話します──」
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加