第三章 視えない能力

16/21
前へ
/120ページ
次へ
 黒谷瑞季ちゃん── その名のとおり、彼女は祓い屋家業を生業とする黒谷一族の娘さんであった。とは言っても、彼女のお祖父(じい)様が先代当主の弟さんで、いわば分家に当たる。  瑞季ちゃんは女の子だし、本家筋ではないので家督を継ぐことはないらしいのですけど。それでも一族の一員として、幼い頃から厳しい修行をして来たのだそうだ。  そんなある日。瑞季ちゃんは自身が持つ強い力に気付く。それは黒谷家が密かに受け継いできた『血』。  (アヤカシ)物怪(もののけ)などの、凡人には視ることができない存在を視ることができるだけでなく。厳しい修行の賜物からか、彼らとの意思疎通も可能とのこと。  実は瑞季ちゃん。やっつけて飼い慣らした(アヤカシ)を何人か、家来のように引き連れていて、今ここにもいるのだと言う。  彼らは時に、ボディーガードのように瑞季ちゃんを守ったり、攻撃をしなければいけない時には力を貸してくれるのだそうだ。  う~ん…… その(アヤカシ)を視れないのが、ことごとく残念。  そして。瑞季ちゃんのお父様は能力が弱く、祓い屋を生業にできるほどでもないため、一族からは爪弾きにされている存在。  お祖父(じい)様が分家として始めた祓い屋家業も、たたまざるを得ない状況に陥ってしまっていた。  そんな父親を見返すべく、瑞季ちゃんは修行に明け暮れてどんどん力を増して行く。その能力は本家筋の能力者も目を見張るほど。  私もいずれ、お祖父(じい)様のような立派な祓い屋になりたい── 瑞季ちゃんは、強くそう思っているのだと言う。  そんな折、入学した高校で我が愚息、義顕と出会う。  (アヤカシ)物怪(もののけ)などは危害を加えるものばかりでなく、例えば岩手県遠野の座敷童子のように、土着して崇められる存在になっているものも少なくない。  民俗や風習を紐解くことで「人ならざるモノ」の理解を、もっと深められるはずだ。そう思って入部した『郷土研究会』。  時を同じくして。歴史好きの両親の影響からか、義顕も『郷土研究会』へ入部。二人は新入部員として、多くの時間を共有するようになる。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加